ノンフィクション

虚空

第1話 交錯

「あなたといると息苦しいの」

それはあまりにも突然だった。

「これ以上友達として一緒にいたくない。さようなら。」

呆然とする私をよそに彼女は立ち上がり、顔さえ向けずに出ていってしまった。

思考が追いつかず、体が冷たくなっていく。ふと視線を下に落とすと、彼女に渡そうと用意した一輪の薔薇と目があった。本当なら、これを渡して今までずっと秘めてきた想いを伝えるつもりだった。たとえ拒まれても、それを受け入れる覚悟もあった。‥なのに。

頬に冷たい感覚が走る。薔薇と目があったままの視界が歪んでいく。

「ごめんね‥」

彼女が私の何を拒んだのかはわからない。私に分かることはただ一つ。

ー彼女を悲しませてしまう自分に、一緒にいる資格はない。

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ノンフィクション 虚空 @kokuu7724

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