メスガキくえすと♡番外編

伊勢池ヨシヲ

聖水屋のメスガキをわからせた!

 魔王ジポルキンを倒して一応この世界を救った俺は、女王姉妹をわからせた後、わからせ行脚の旅に出ることにしたのだった。


 だがその前に、是非とも立ち寄っておきたい所がある。以前、武器屋へ行く道すがら見かけて気になっていたあのお店。そう、聖水屋だ。


 あの時は、店内にメスガキとみられる店員がいたため、立ち寄るのを思いとどまったのだった。

 また窓越しに店内を窺ってみると、今回はこの前見たのとは違う店員がいるようだ。だがこの店員もメスガキ感が否めない。


 そしてお店の名前。看板には『ほ~りぃうぉ~たぁ♡』と書いてある。もうこれだけで、心がざわついてくるというか嫌な予感しかしない。


 まぁいざとなれば《わからせ棒》があると、俺は意を決して店内に入った。


 チリンチリン――。


「おかえりなさいませ~、氷河期おじさん♡」


 年の頃はまだ中〇生くらいにしか見えない黒髪ツインテールの女の子が、侮蔑を含んだ満面の笑顔で出迎えてきた。


 ちょ、おーい! いきなりそう来るんかーい!


「店内でお召し上がりですか♡? それともお持ち帰りですか♡?」


 て、店内でお召し上がり? ここって聖水屋だよね? 何かめっちゃメイドカフェみたいじゃないか!? それにお召し上がりって何を??


 いろんな疑問が頭の中をぐるぐると駆けめぐる。さらに店内を見回すと、いくつかのテーブル席があり、そのうちの一つに客とみられる男が座っていた。


 男の風体は、でっぷりとした腹に薄汚れた布の服を着ただけの、およそ冒険者とは程遠い格好だ。

 俺と同じ氷河期の臭いが漂うこの男も、あのいかれた法律によってこの世界へと転生させられたのだろうか。


 そこへ、これまた中〇生くらいのピンク髪をした店員が、男の元へ料理を運んできた。


「お待たせ~♡ ミーナの聖水入りとぅるとぅるオムライスだよ~♡」


 えっ、何それ? オムライスに聖水入ってんの??


「ねぇねぇ、オムライスに書く文字はどうする~♡? あ、でもおじさんは氷河期だから~、これでいっか♡」


 そう言うと、蔑んだ笑みを浮かべた店員は勝手にケチャップで文字を書き始めた。よく見ると、オムライスに『クソざこ♡』と書いたみたいだ。


 やっぱりこの店員もメスガキで、客の男も氷河期おじさんだったんかーい!


「それじゃあこれから、オムライスが美味しくなるおまじないかけるよ~♡ 萌え萌えドピュ♡」


 おいおい、もう本当にただのメイドカフェじゃないか! っていうか、ドピュって何だドピュって。


「あ、あの……、スプーンかフォークってないんですか?」


 早速オムライスを食べようとした男がメスガキ店員に尋ねた。


「は? 何言ってるの。豚がスプーンやフォークを使うなんておかしいでしょ? お口でそのまま食べるの♡ さぁ食いやがれ♡」


 メスガキ店員は、最大級の侮蔑を湛えた笑みでそのまま食べるように促した。


「は、はい……。いただきます!」


 すると男は、躊躇うことなくオムライスに顔を近付けて食べ始めた。


「あは♡ おじさん本当に豚みたーい♡ ほら~、ぶひぶひ鳴け~♡」


「ぶ、ぶひっ、ぶひぃ~!」


 豚のようにオムライスを貪り食べるその男は、口の周りにべったりケチャップを付けつつ鳴き声を上げた。


 おい、おっさん、それでいいのか? あんたには人としての、いや、氷河期としてのプライドってのがないのかよ!

 目の前の光景を見て、何やら自分まで氷河期おじさんとしての尊厳を貶められたような気がして居たたまれなくなった。


「ねぇねぇ、そこの氷河期のおじさん♡ 何ぼーっと突っ立ってるんですか〜♡?」


 一部始終を苦々しく見ていた俺に、最初に接客してきたツインテの店員が侮蔑を含んだ笑顔で聞いてきた。こいつも紛うことなきメスガキだ。


「あれ見ておじさんも店内でお召し上がりしたくなっちゃった~♡?」


 なるかよっ! と、俺は心の中でつっこんだ。


「と、とりあえず俺はお持ち帰りで……」


 ここは当初の目的通り、普通に聖水を買うに留めておいた方が良さそうだ。


「それじゃあ〜、このメニューの中から選んでね♡」


 メスガキ店員はメニューを差し出してきたのだが、それをよく見てみると――。


『ふつうの聖水♡』

『ミーナの聖水♡』

『エマの聖水♡』

『女の子の生搾り聖水あります♡』

『その他オプション多数あり♡』


 ……などと書いてある。


 おいおい、ミーナにエマの聖水って何だよ!? ていうか、生搾り聖水ってどういうこと? オプション多数って何??


「どうしたの~、おじさん♡ どれにしようか迷ってるの♡? だったら~、このエマの聖水なんておススメだよ〜♡ それはあたしの聖水だから♡」


 そう言ってツインテのメスガキ店員は、淫靡と侮蔑をないまぜた目つきで、自分のだというエマの聖水を勧めてきた。

 あたしの聖水ってどういう事なんだろう? それってまさかこのメスガキの……。いや、ないない、そんなはずはないな。


「あれ~? おじさん、今何か変なこと想像してなかった~♡?」


 やっべ、思いっきり見透かされてた。メスガキのこういうところの嗅覚は本当に鋭いものがある。


「い、いや、別に……。と、とりあえず、このふつうの聖水っていうのを一つください」


 俺は努めて平静さを装い、無難にふつうの聖水を注文したのだった。


「え~、ふつうの聖水にするんですか~? どうせなら~、あたしの聖水買ってくださいよ~♡」


 ツインテのメスガキ店員は甘えた声でおねだりしてくるものの、完全に俺を小馬鹿にしたような蔑んだ顔をしている。


「いや、ふつうので結構なので」


 本当はちょっと、このメスガキ店員の聖水っていうのが気になるのだが、ここは誘惑を断ち切って毅然とした態度で臨んだ。


「ちぇ~、つまんないの~。あ、ていうか~、おじさんはどうしてこのお店に来たんですか~♡? 本当は聖水っていう言葉に何か違うものでも想像してたんでしょ~♡?」


 おススメの聖水を注文しなかった腹いせのつもりなのか、ツインテのメスガキ店員は侮蔑の色を濃くした目つきで煽ってきた。


「そ、そそそ、そんなことあるわけないだろっ!」


 図星を突かれた俺は、なんとも歯切れの悪い返事をする。


「あはは、おじさんきょどってるよ♡ ウケる~♡ 本当は違うもの想像してたんでしょ♡? 正直に言っちゃいなよ~♡ ねぇ、何を想像したの~♡?」


 ぐぬぬ、このメスガキ……。これまでどうにかこうにか自制してきたわからせ願望が、むくむくと込み上げてきた。まだだ、まだ堪えろ俺!


「ここに来る氷河期のおじさんて、み~んなそういうのを想像して来るんだよ~♡ だからおじさんもそうなんでしょ~♡? 自分の気持ちに正直になりなよ~♡ あ、でもでも~、これまで自分の気持ちや欲望に正直になり過ぎちゃったから、いつまでもクソざこのままなんだっけ~♡ あはは♡」


 ……ふぅ。このメスガキ、ついに一線を越えちまったな。いいだろう、お前が舐め腐った氷河期おじさんの実力を思い知るがいい!


 俺は《わからせ棒》を使った。


「えっ、ちょっ、な、何なんですか~? そ、そんなモノ店内に持ち込み禁止……あっ」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「やだっ、そんなのムリだから! 絶対にいやっ! ねぇ待って、お願いだから! ちょ、だめっ! あっ…… ※☆Ψ〇Σ!? あ゛あ゛あ゛……」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「はっ、ひっ、あんっ、んぁっ、あひゅ♡ やだっ、あっ、だめ……お゛っ♡ あ゛っ、あ゛っ……、おっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ ん゛ぉ♡」


「ちょっと、そこの氷河期のおじさん! 何やってるんですか!? 衛兵呼びますよ?」


 さっき男性客を豚扱いしていたピンク髪のメスガキ店員が詰め寄ってきた。俺は男性客の敵討ちとばかりに、そのメスガキ店員へも《わからせ棒》を使った。


「い、いや……、そ、そんなの近付けないで! ひっ、ひぃ! んごぉおおお、おごっ、おほっ……んぐっ、あがっ……ぶはぁっ!」


俺は《わからせ棒》を使った。


「ふぇ……、ひっ、ご、ごめんなひゃい! や、やめて! いやああああ! お゛お゛お゛お゛お゛……、あっ、あっ、はっ、ひっ……ん゛ぁ♡」


俺は《わからせ棒》を使った。


「はっ♡ あひゅ♡ んっ♡ い゛い゛い゛い゛い゛……、ほっ♡ ほっ♡ んぁ♡ も、もっとくだひゃい♡ はうっ、おほっ……わ、わたしにもおねがいひまひゅ……♡」


俺は《わからせ棒》を使った。


「お゛ぁ♡ ん゛ぉ♡ お゛お゛お゛お゛お゛……、はっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……、あっ♡ あっ♡ あっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ はぁああああああああああ♡♡」


 こうして俺は、二人のメスガキ店員に《わからせ棒》を交互に使って徹底的にわからせたのだった。


***


「それじゃあ~、こちらがふつうの聖水になりま~す♡」


 まだ上気して息が荒いツインテのメスガキ店員は、もうすっかり侮蔑だけではない顔になっている。


「あ、そうだ、ちょっと待っててね♡」


 そう言うと、メスガキ店員はカウンターの奥へと消えた。しばらくして戻ってくると、淫靡なメスの顔つきをして何やら小瓶を差し出してきた。


「これはサービス♡ あたしの聖水だよ♡ しかも搾りたて♡」


 ほ、ほう。これがメニューにあった生搾り聖水ってやつか。

 黄金色をした液体が入ったその小瓶からは、人肌のような温もりが伝わってくる。


「今度は店内でお召し上がりしていってね♡ その時はあたしがたっぷりサービスしてあげる♡」


 もう一人のピンク髪をしたメスガキ店員も、メスな顔をしてそんなことを言ってきた。確かに今度来る時は、店内でお召し上がりするというのもアリだな。


「「それではいってらっしゃいませ~、氷河期のクソざこおじさん♡」」


 おい、誰が氷河期のクソざこおじさんだ! また《わからせ棒》を使ってやんぞという素振りを見せると、メスガキ店員どもは黄色い声を上げながらも物欲しそうな顔になった。


 こうして俺は聖水屋を後にして、心置きなくわからせ行脚の旅に赴いたのだった。

 

 ちなみに、早速もらった生搾り聖水を身体に振りかけて使ってみたのだが、確かに聖水というだけあって、魔物を寄せ付けない効果はあった。だがそれと同時に、何故か氷河期のおじさんとやけに遭遇することとなった。どうやらこの聖水には、氷河期おじさんを引き寄せてしまう効果があるようだ。

 

 そして試しに、その聖水をぺろっとしてみたのだが、激マズだったのは言うまでもない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】

作者よりお願いがございます。面白いと思ったら☆やレビュー、作品のフォローなどをしていただけると本当に嬉しいです。

皆さまからの応援が今後の励みとなりますので、何卒よろしくお願い致します。


この作品は「ツクール×カクヨム ゲーム原案小説オーディション2022」に参加している『メスガキくえすと♡』のスピンオフです(本編は同オーディションのゲーム原案小説総合部門中間選考通過)。


本編の方もよろしくお願い致します。

https://kakuyomu.jp/works/16817330647909168187

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