第1章 初めまして!新人Vturerの友ちゃんです!
30歳を前にしてVtuberにさせられそうです①
始まりは私宛の一件のラインだった。
もう何年も会っていない、高校時代のクラスメイトからのライン。
当時は仲が良く、よく話していたし移動教室なんかもどちらからともなく誘って一緒に行くような関係性で。
親友……と言ってもよかったかもしれない。彼女との思い出を
彼女とは高校卒業後は別々の道を歩み、30歳を目前にした今に至るまで一度も話すことはなかった……と思う。
そんな彼女からのライン。人間関係が希薄すぎて彼女のことはすぐ思い出せたけれど、一体なんの用なのだろうと少し身構えた。
十数年ぶりの友達からのラインなんて、マルチか結婚報告かくらいしか思い付かない。
でも彼女は女性が好き……だったはずだし結婚は……いやでも、同性愛者の人が異性と結婚するって話はよく聞くしな……。
私はそんな邪推を巡らせながら、彼女からのラインを今一度確認する。
『
とりあえず、返信しなければならない。
これで急に「なんの用?」とか返したら冷たくなったなと思われかねないので、無難に「久しぶり。覚えてるよ」と返しておいた。
すぐ既読がつき、次のメッセージが送られてくる。
『よかった、返してくれた。久しぶりだったから無視されちゃうかなって思った』
そんな風に思ってたのか。まあ確かに不安だよね。
『まあ久しぶりすぎてびっくりしたけどね笑』
『それはごめん。陽南ともっと話せばよかった』
『どうしたの?なにかあった?』
『あったっちゃあったんだけど。陽南ってYouTubeとか観る?』
なんだなんだ、急にYouTubeの話が出てきたぞ。
まさかYouTuberになったからチャンネル登録してとかそういう案件だったりする?
それだったらある意味安心するけれど。
しかしこの後、その予想が当たらずとも遠からずだったということを知ることになる。
『観る』
『じゃあ、Vtuberって知ってる?』
『ああ、知ってるよ。それがどうかしたの?』
『私ね、Vtuberになるんだ』
え?
それはメッセージではなく心の中で発せられた言葉だった。
まさかその角度から切り出されるとは思わなかったので、思わず動揺してしまった。
ていうか、さっきの予想ほぼ当たってた!
『そうなの?』
『うん』
私は次に送る言葉を探した。
『それは趣味でってことだよね?』
『趣味...に近いけど、今って趣味が仕事になる時代じゃん?それにちゃんとした事務所に所属することになってる』
そうか、合点がいった。
彼女は所謂"企業Vtuber"になるということなのだろう。
Vtuberに疎い私でもそれくらいは知っている。
YouTubeにおいてVtuberの影響力はすさまじく、配信を軸とした諸々の活動は多くの人の心を惹き付ける。
スーパーチャットやメンバーシップといった"視聴者が推しへの感謝を還元する"システムにより莫大なお金が飛び交い、トップVtuberになると普通のサラリーマンが一生働いても稼げない額を一年で稼いでしまうこともあるとか。
そんな業界だから、当然活動をサポートしてくれる仲間が必要なわけで。
それがvtuber企業ということになる。
大体こんな感じだよね?
前に好きなYouTuberとVtuberがコラボしていて、その時にVtuber事情みたいなのを話していたから知識としてだけ覚えていたのだ。
まあ、趣味でやるんだったらそれをわざわざ十数年話してない人に報告しないもんね。
どこに入るんだろ。言われても多分分からないけれど。
何はなくとも、それなら応援しない理由はない。
わざわざこうして連絡してくれたってことは、彼女の中でもそれが大きなことなんだろうと理解する。
だから私は彼女を全力で応援するつもりだ。
だったのに。
次の彼女の言葉は私のそんな想いを根本から崩してしまうほど受け入れがたいものだった。
『そうなのか!すごいじゃん、友達として応援するよ!』
『ううん、ちがくて』
『うん?』
『陽南、私の代わりにVtuberになってくれない?』
十数年ぶりの友達からのライン。
それは私の人生を百八十度変えてしまう思いがけない誘いだった。
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