第七十六話 簡易式刻印

 ショーツとブラの術式の文様が淡い光を放ち、アンリの右太股と左手の甲に青いイバラ状の簡易式淵術刻印が刻まれる。

 瘴気から生み出された魔力が胸部で濃縮され、青い下着複合術式のブラとショーツから溢れた魔力によって、肉体が強化され、胸がより豊かに膨らんでいく。魔力により青いドレスが形成され長身の美女に変異したアンリの身体を包む。

 短いスカートからルーネより受け取った銃がしまわれたホルスターが見えている……身体から冷気が溢れ周囲の床を凍り付かせる。


「石化が止まった?第二覚醒か……減速術式の資質持ちだし、わたしのコレクションに……」


 魔女がアンリを値踏みしながら微笑む……アンリは瞬時に接近し、アヴローラを蹴り飛ばす。


「くっ、油断……」


 蹴りを喰らった魔女アヴローラは素早く起き上がる。アンリは氷の槍を形成し魔女へ投擲する。対するアヴローラは障壁を構成し氷の槍を受け止める。


「はあっ!」


 オクタヴィアが距離を詰め、魔女にハルバードの一撃を繰り出す。魔女アヴローラは二本の剣で受け止めるもオクタヴィアの膂力で左の剣を吹き飛ばれる。魔女はオクタヴィアの追撃から逃れる為より高く浮遊する。


「黒炎剣!」


 アガサの放った淵術の炎が浮遊する魔女に襲いかかる。


「結界を展開」


 魔女はアガサの淵術を結界で防ぐ。


「っ!」


 オクタヴィアはナイフを投擲しアヴローラの脚部の光輪を破壊する。光輪を破壊されたアヴローラは高度を保てなくなり地面に落とされるも即座に立ち上がる。


「うっぐっ……」


 魔女アヴローラが体勢を立て直そうとしたところにアンリが蹴りを入れた。アヴローラも蹴りで迎撃する。


「くっ!このパワー……不味い」


 アヴローラは顔を苦痛に歪める。彼女の脚部の膝下が凍り付く。更にオクタヴィアが魔女のみぞおちに掌底を叩き込む。


「ぐぁ……なに、これ……」


 魔女が身体をくの字に曲げ吐血し、白霊布のドレスが血で赤く染まる。


「うっ、ぐぇ……おおっ……」


 後ずさりしながら魔女は更に吐血する。両膝が震え、腹部が不自然に脈動し膨張する。


「魔女は融合体を維持出来なくなっているようです」


 石剣を握る魔女の右手が大きく震えている。顔を苦痛に歪めながら、左手で腹部を押さえる……スカートの中から血に染まった卵型の石が落下し、床に転がる。


「はあ……はあ……」


 魔女アヴローラの胸が萎んでいく……成熟した女性の姿から少女の姿に戻っていく。


「魔剣の疾走……」


「魔剣の疾走!」


 魔女の放った淵術はアガサの淵術によって打ち消される。


「ラプスニードル」


 アンリは、魔女の放った無数の石の針を巨大な氷壁を展開し防ぐ。アンリは太股のホルスターから銃を抜き魔力を込め銃弾を放つ。弾丸は魔女の身体に直撃し、銃創から魔女アヴローラの身体が凍りついていく。


 「岩津……」


 術の発動前にオクタヴィアのハルバードの鋭い突きがアヴローラの身体を貫く……魔女の握っていた石剣が床に落ちる。魔女の身体が機能を停止し、少女の石像へと姿を変える。


「やったか?」


 オクタヴィアが呟くと少女の石像が砕け散り、銀色の魔法石の欠片が床に散らばった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る