第70話 扉

 魔女アヴローラの吐息が女の姿に変異したディアスの首元にかかる……アヴローラはディアスの下腹部に手を伸ばす。

 オクタヴィアと金髪の女ベネラが激しく打ち合う。オクタヴィアはハルバードでベネラの右手に握る剣を払いのけ、彼女の顔面を蹴り飛ばす。さらに素早く銃を抜きベネラの左肩に弾丸を命中させる。


「ぐっ!」


 アヴローラが小柄な少女の姿に見合わない膂力でディアスの身体を抱きかかえ、無数の石の針をオクタヴィアに放ち牽制する。


「ベネラさん退いてください」


 銀髪の魔女アヴローラが広間の奥を一瞥すると奥の石壁に隠されていた扉が開いた。

 ……アンリを吹き飛ばした巨大な石の手が後退するアヴローラとベネラをかばうように立ちふさがる。アヴローラとベネラが扉の奥に後退していく。


「どけ!」


 アンリが立ち上がり石の拳を蹴りつける。巨大な石の手はアンリの足を払いのけると……その巨大な腕部が石床から姿を現した。


「こいつはでかいな」


「はぁっ!」


 オクタヴィアはハルバードを石の拳の小指の根本に激しく打ちつける。


「もう一発!」


 巨大な石の拳の小指が二発の攻撃を食らい切り落とされる。石の拳による殴打をオクタヴィアはハルバードで受け流す。


「アンリ!」


「任しとけ!」


 アンリが蹴り飛ばした氷球が巨大の石腕に命中し炸裂する。石腕が凍り付き動きが鈍る。


「一気に決める!」


 オクタヴィアが激しい連撃を加え、石腕を粉砕し石片に変えていく。


「倒したか?」


「ええ……」


 オクタヴィアは汗を拭う。

……隠させていた広間奥の扉が開け放たれている。


「風の流れがある、扉を開けたままってことは誘ってるのか?」


 暗く静まり返った扉の奥からひんやりとした風が流れ込んで、二人の足元に微かな寒気を感じさせる。


「風の流れがあるってことは結構広くて別の出入口がある?」


「そうかもな……」


 ……扉の通路に地下に続く階段があるのが見えた。


「宝物庫があるかも?」


「とにかく、ディアスを助けるためには進まなきゃな」


 ランタンを持ちながら暗い扉の奥へ足を踏み入れる。

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