第22話 巡回聖女ガラテア4

 ……ガラテアは目を覚ました。


「……うっ……あっ……」


 彼女はベッドに横たわっていた……全身が痛い……上手く声が出せない。眩暈がする。


「……胸、大きくなってる」


 彼女はおもむろに自身の胸を触った。指先に柔らかな肌の触感が伝わる。


「目、覚めたか」


 ベッドから身体を起こしたガラテアに鏡の前で髭をそっていたアンリが声をかけた。


「あの洞窟から倒れたアンタを背負ってきたんだぜ」


「……どれくらい……経った……んだ?」


「あれから三日だな、アンタはずっと、ここで眠ってたんだ」


 ガラテアは虚ろな目でアンリの部屋を見回す。


「ベッド……占領しちゃって悪いな……」


「気にすんな」


「うっ、ああっ、ああああ!!」


 ガラテアが突然、嬌声をあげた。


「おい、どうした!」


「うっ、熱い熱い、ハアハア、体が溶けそうだ……」


 ガラテアはベッドに倒れこみ、表情を歪ませた。


「おい、ガラテア!大丈夫か!?熱っ!」


 ……彼女と一体化した聖槍からあふれだした魔力が彼女の中を激しく駆け回る。

 ガラテアは燃え滾るように火照った身体をベッドの上で苦しそうによじらせた。

 アンリはガラテアの背中をさすって減速術式で余剰魔力を相殺し彼女の身体を冷却する。


「ううっああっ!!はあはあ、ああ」


 ガラテアはベッドの上で体をよじらせ苦しみ悶えている。

 ……彼女の白く滑らかな肌が汗に濡れ、苦痛に歪む美しい顔から大量の汗がとめどなく溢れる。

 アンリはベッドにうつ伏せになった彼女の汗に濡れた背中に手を添えた。


「ああっ!あっ!」


「……我慢できるか」


「……はあはあっ、うっ、何とか……」


・・・・・・・・・


「ガラテア、落ち着いたか?」


「……何とか……もう大丈夫だ……なあアンリ、洞窟での怪我は……大丈夫なのか?」


「ん?大丈夫だ、問題ない……ああ、これか?」


 アンリの頬に血がついていた。


「さっき、髭を剃るときに切ったんだ、大したことねぇさ

ゴブリンのおっさんから使い勝手の良さそうな黒曜石のカミソリを買ったんだが……ちょっと手元が狂ったんだ。」


 ガラテアはアンリの顔に手をやると、アンリの顔の傷口が塞がっていく。


「……あれから三日も経ったのか」


「ずっと、うなされてたぞ」


「……ああ、そうか……」


「もう落ち着いたか?」


「なんとかな……」


「もう少し、一緒にいようか?」


「……お前に心配されなくても……私は平気だ」


「ん、おっそうか……それじゃあ、もうオレが見てなくても平気だな」


 そういうとアンリは身支度を整え始めた。


「じゃあガラテア、オレは出かけてくる

仕事で帰らないから、この部屋は好きに使ってくれ……机の上に予備の鍵があるから」


「……ああ」

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