第136話 お茶会の約束と公爵の心情
「ノルバンディス学院は学年ごとに二つのクラスがあり、どちらに入るのかは学院側が決める。基本的にはクラスごとに授業を受けることになるので、クラスには仲の良い者を数人作っておくと良い」
友達作りね……瀬名風花時代に苦労した記憶がある。社会人になってやっと解放されたと思ってたけど、またここであの緊張感を味わうのか。
しかも身分がある国での友達作りって、日本でのものより難しくて複雑そうだ。
「そのクラス分けは、身分などは考慮されるものですか?」
「そうだな。身分が平等になるよう考慮される。したがってリオネルとレーナは普通ならば別クラスなのだが、今回はレーナが養子になったばかりという特例のため、二人は同じクラスになることは決まっている」
リオネルとは同じクラスなんだ。それはかなり心強いかもしれない。これから入学までの間に、リオネルと仲良くなっておかないと。
「リオネル、これからよろしくね」
「もちろん」
それからもお養父様の話を聞きつつ夕食は進んでいき、全員が食事を終えたところで解散することになった。まず食堂から出るのはお養父様とお養母様で、その次が子供である私たちだ。
「……お姉様、クルネを味わうお茶会はいつ開くの?」
食堂から廊下に出たところで、アリアンヌがポツリとそう呟いた。アリアンヌ、最初はちょっと反発してただけで、仲良くなろうという気持ちはあるみたいで良かった。
ツンデレってやつ……? そう考えると、俄然アリアンヌが可愛く見えてくる。
「近いうちに開こうか。リオネルとエルヴィールはいつが良い?」
「私はいつでも構わないよ。一番忙しいのはレーナだろう? 私たちが幼い頃から学んでいることを、短期間で詰め込んでいると聞いたよ」
そう言って私を気遣うリオネルは、優雅に微笑んでいてなんだか大人だ。まだ十二歳なのに、公爵家子息の十二歳凄い……!
「気遣ってくれてありがとう。エルヴィールもいつでも大丈夫?」
「うん!」
「じゃあ……五日後はどう?」
そのぐらいあればこの生活にも慣れて余裕があるはずだと思い提案すると、三人とも反対はなく頷いてくれた。
「それで良いわ。お茶会はお姉様が開いてくださるの?」
「えっと、私はお茶会を開いたことがないんだけど、どうすれば良いのかな」
「もう、お茶会も開けないなんて貴族子女失格よ。今回は私が開くので、お姉さまはちゃんと学ぶように!」
一見強い口調で私のことを非難しているように聞こえるけど、アリアンヌは少し照れた様子で頬を赤くしている。
私がお茶会の勉強をできるようにって考えてくれてるのかな……アリアンヌ、凄く良い子だ。
「ありがとう。じゃあ今回はアリアンヌに任せるね」
「ええ、公爵家子女として相応しいお茶会を見せてあげる」
アリアンヌがやる気十分な様子でそう宣言したところで私室前に到着したので、私たちはまた明日と挨拶をしてそれぞれの部屋に戻った。
三人とも仲良くなれそうで本当に良かった。お養父様とお養母様とも上手くやっていけそうだし、貴族としての滑り出しは順調かな。
でもその代わり、色々と気を遣うし勉強もしてかなり疲れてるけど……どこかで離れに行って癒される日を作ろう。
♢ ♢ ♢
初めてのレーナも交えた夕食を終えた私は、私室に戻りソファーに腰掛けた。侍従が淹れてくれたハク茶を飲みながら、ここ数日のことを考える。
最初に創造神様の加護を得た平民を迎え入れることになった時には、これからどうなるのかと不安に思ったものだが、レーナは今のところ全く問題がなさそうだ。
さすが創造神様の加護を得た者なのか、素直で賢く努力もできる。さらにはこの国のため、公爵家のためにと考えることもできるようだ。
本当に今まで平民として暮らしていたのか、ましてや少し前まではスラム街で暮らしていたなど信じられない。
「これから、この国を良い方向に導く存在になってくれるかもしれないな」
そのために私ができることは、やはりまずは環境を整えることだろう。そして貴族社会に馴染めるよう、立場も明確にしなければならない。
社交の場でレーナを娘として紹介するのは当然として、いずれはリオネルと婚約させるのもありかもしれないな。二人の相性を見て、問題なさそうならば提案してみるか。
レーナを引き取ったことによる影響について思考を巡らせ、ハク茶を飲み終えたところで、少し仕事を進めるために執務机へ向かった。
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