【完結】第三の選択─Even if it's not love─
crazy’s7
Even if it's not love, stay by my side.
1話 価値観 【side:奏斗】
1 奏斗の噂
「まーた派手な噂が流れているね」
「ん?」
背後からよく知った声が聞こえ、
「
K学園では二大セレブの片割れと言われている
K学園は幼稚園から大学院まであるマンモス校。お金持ちの子息子女が多く通う学園であり、幼稚園から入学したものを内部生、それ以外を外部生と呼ぶ習慣がある。
大崎圭一は内部生、古川は外部生だが気が合うのか一緒にいるところを以前からよく見かけていた。
奏斗が二人と話すようになったのは高等部の時である。
彼らは生徒会や風紀委員会に携わったことのある有名人。その上、奏斗の『悪い噂』を真に受けたりもしない人物だった。
「よ、色男」
と古川に言われ奏斗は肩をすくめた。
「色男ってのは大崎みたいなのを言うんじゃないのか?」
奏斗が古川の後ろでポケットに両手を突っ込み、黙っている圭一に水を向けると、彼は苦笑いを浮かべ、
「俺はモテたことがない」
という。
K学園には裏掲示板というものが存在し、イケメンランキングなるものも公開されているが、不動の一位は大崎圭一である。
だが、確かにキャーキャー言われているところも誰かに告白されているところも見たことはない。
「そういえば、大崎はモテランキングには載ったことないねえ」
と古川。
「そこの色男は常連みたいだがな」
と圭一。
悔しいのだろうか、普段はそんなことに関心を示さない彼がそんなことを言うのがおかしい。
「今度の噂は?」
奏斗は話を逸らそうと別の話題に向けたつもりだったが、
「二股かけてるらしいね、白石くん」
と言われ吹いた。
「あー、まあ。それは強ち間違っていないというか」
「うわ、何それ。彼女一筋だったのに、どうしちゃったの?」
「最低だな、白石」
心配そうな古川とは裏腹に、あからさまに軽蔑の視線を向ける圭一。
実のところ、二股どころではない事態に陥っていたが、黙っていることにし
た。
「どうしたらそんなモテるの? 俺も髪染めようかな?」
「止めとけ、古川。似合わないから」
「酷いよ、大崎ー!」
二人のやり取りを曖昧な笑顔を浮かべ眺めながらポケットに手を突っ込むと、ブルっとスマホが震えた。
画面を見ると、高等部の時に一時期つきあっていた女性からのメッセージ。最近大学のキャンパスで再会し、たまにご飯を食べに行く仲になっていた。
「悪い、呼び出しだ。行かないと面倒なことになるから」
奏斗は言って片手をあげると駐車場へ向かって歩き出す。
「モテる男は大変だねえ」
という古川の声が聞こえた。
大学の駐車場に向かうと赤いスポーツカーに美女が寄りかかって立っている。彼女は
奏斗が高校時代につきあっていた
「あら、早いじゃない」
「近くにいたもんで」
「相変わらずイイ男ね。ちょっと買い物につきあって下さらない?」
奏斗はため息を一つ着くと、
「いいよ」
と答えた。
「相変わらず派手な車に乗っているんだな」
「お
長いストレートの髪が揺れる。
「いや、いいよ」
高校時代には酷い目に合ったが、男女の関係を抜きにすれば花穂は居心地のいい相手。
奏斗は助手席に乗り込むと、
「美女の運転で」
と花穂の方を見やる。
「あら、その美女を振っておいてよく言うわね」
「俺はフッたつもりはない」
高校卒業までという約束だったからそれに従ったのみだ。
「ふうん」
彼女はつまらなそうにそう零すとアクセルを踏み込んだのだった。
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