解決の涙

 数日後、私とアルはクリス工場長のもとを再び訪ねた。

「アルバート王子、エリーナ妃。今回は本当にありがとうございました!」

「いえいえ、良いのですよこれくらい」

「もう、なんとお礼を言ったらいいのか」

 クリス工場長は泣いていた。疑いが晴れるまでの数日間ずっと辛かっただろうと思うと私の方まで泣けてくる。

「私も疑いが晴れてよかったと思っています」

 涙を拭こうとハンカチを取り出そうとしたが、ハンカチを忘れたことに気がついた。すると、それを察したのかアルが自分のハンカチを差し出してくれた。

「どうぞ」

「ありがとう」

 それで涙を拭くとクリス工場長が私とアルを見つめていた。

「いや、いい関係だなと思いましてね。あの日、あなたたちが最初に来てくれて本当によかったです」

 私はアルと顔を見合わせる。それから二人で少し微笑んだのだった。



 夜になって城に戻ると応接室に来客が来ていた。カニエルだった。

「こんばんは」

「どうも、今日はどうしてここに」

「お二方のおかげで、汽車を密輸していた連中を捕まえることができました。そのご報告に」

「なるほど。ありがとうございます」

「それと、できれば今後はこういったことは控えてほしいのです。これは私の仕事なので」

 カニエルは少し機嫌が悪そうにこう言った。

「カニエル。この前はずいぶんと無理な手を使ったじゃないの。下手をしたら無実の人たちを捕まえるところだったのよ」

「まあ、それはそうですが、次からは気をつけますよ。エリーナ妃」

 彼は言い方にいちいちトゲがあった。彼と婚約していた時はこんな人ではないと思っていたのに。彼のイメージがどんどんと崩れていく。ああ、彼といるのが少し辛い。


「あの。一ついいかな」

 アルが手を挙げた。

「なんですか?」

「カニエル大臣。私の妻を傷つけないでほしい。今、彼女の顔を見てどう思う」

 カニエルは私の顔を見た。

「……少し苦しそうですね」

「ですよね。だったらこれ以上はトゲのある言い方を慎んでほしいな」

 カニエルは一瞬悔しそうな顔をすると、

「失礼した。では今日はこれくらいで」

 と言って、帰っていった。


「なんかごめんね」

 私はアルに謝った。

「良いんだよ、むしろあれくらい言ったほうが彼のためだと思う」

 カニエルにああ言われてなんだか悔しくなって泣きそうになる。だが、こんなことで泣いてたまるかと思った。アルはそれを感じ取ってくれたようで、私のことを軽くハグしてくれた。

「大丈夫、あなたは大丈夫」

 アルにこう言われて、なんだか本当に大丈夫な気がしてきた。私は彼の胸に顔を埋めたのだった。

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