第18話

日課のティアの登校を見守るという名の待ち伏せすること4日目。

アスパルド家の馬車からレオンの手に手を添えて降りてくるティア!

ティアの左手には包帯が巻かれているのが痛々しい。

4日ぶりのティアは久しぶりの学園が嬉しいのかニコニコしてる。

間違いなくティアは世界一可愛い!

降りてきた瞬間なんて後光がさして見えた。

周りの生徒も2人に見とれているのはいつもの事。


ただ今日は何か雰囲気が違う?

いつも好意的に見てたはずなのに、嫌な目をしているヤツが半数近くいるのに気づいた。

あれは軽蔑してるのか?蔑んでいのか?

だいたい高位の令嬢に向ける目でないことは確かだ。


そして小声で話しているようだが、「あんなに上品振っても陰では下位貴族の令嬢をいじめてるのですって」

「ワタクシも聞きましたわ。弱いものいじめをするなんて最低ですわね」

「やっぱ顔だけ令嬢か」

「声かけなくてよかったよ」

「あんな人が妹だなんてアスパルト様が可哀想、慰めてさしあげたいわ」

「前にアスパルト令嬢は我儘で傲慢だと噂されていたのは本当だったのね」

なんて次々に聞こえてきた。

だいたい下位貴族の令息令嬢がほとんどだな!

顔は覚えた!


すると、レオンがゆっくりと冷たい目で見渡すと一気にあたりの気温が下がった。

今まで蔑んでいたヤツらは目を逸らしそそくさと去っていく。


あ~あレオンを怒らせたな。

今は学生で、この学園では「身分の差なく平等」と謳ってはいるが、卒業して社交界に出た時にはそれは通用しない。


この学園は4年間、15歳から18歳までの貴族の令息令嬢が通う。たまに平民からも優秀な成績で入ってくることもあるな。

18歳が成人とされ、卒業後に社交界にデビューすることがほとんどだ。

馬鹿なヤツはそこで痛い目に合う。

賢いヤツは冷静に判断ができてるようで、例え思ってはいても人に聞かれるようなところで、口にはしないし態度にも表さない。




ティアに聞こえてなければいいが・・

そんなはずはないな、さすが高位貴族だけあり顔には出すことはないが、嬉しそうなニコニコ顔だったのが高位の令嬢らしい微笑みを貼り付けてレオンにエスコートされて行った。

一瞬レオンと目があったが口の端を軽くあげたように見えた。


レオンはもともと無表情で口数は少ないが、怒らせると怖いことは身をもって知っている。

もしかしたら兄上よりも優秀かもしれない、なんて思ったりするほどなんでも完璧にこなせる。

見た目は超一級品!無表情で冷たく見えるし口も悪いがほんの一瞬顔を綻ばせる時がある。

見た事のある奴は強く惹かれるようだ。

王城にいるメイド達にも俺や兄上を差し置いて1番人気だ。

困っている時に黙って手を差し伸べるらしいが本人にとっては自然な行動なのだろう。

お礼を伝えると少し口元が上がるのが堪らないと聞いた。

基本優しい人間なんだろう。


幼い頃は負けず嫌いの俺は何度も剣術の稽古の時挑んだが勝てたことは1度もない。

1度笑顔でボコボコにされたことがあった。

あれは怖かった!

あれ以来俺から挑むことはなくなった。

兄上が「今回は仕方ないね」って、言ってたから俺が何か怒らせるようなことをしたのはわかったが、何が理由だったかは今だに分からない。

世の中には絶対に怒らせてはいけない人がいることを痛いおもいをしたが、気づけただけ俺は賢くなったと思う。

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