第16話 ティアリーゼ視点

あ~あ退屈だわ。


手を捻っただけで学園休むことになるなんて暇だわ。


こんな怪我なんて、小さい頃はよくしてたのに。

お兄様ってば過保護過ぎるわ。

それはお父様もだけど、2人から必要以上に甘やかされてたわたくしの将来を心配されたお母様からは礼儀作法は完璧に、もちろん勉学も詰め込まれたのよね。


お母様は隣国アトラス帝国の第2王女だったのに、この国に留学中にお父様と出会い大恋愛の末結ばれたと聞いている。

今の帝国の皇帝はお母様のお兄様で、2人の皇子がいる。

わたくしとお兄様の瞳の色もいとこ達も紫の瞳よ。この色は皇族にしか出ないと聞いているわ。


あ~暇、暇だわ


わたくしは小さい頃から邸の外に出ることがなかっの。


お父様とお兄様が誘拐されたら大変だとあまりにも心配するから素直に聞いていたけど、その分邸の敷地内では木に登ったり(怒られた)走っては転び、暑い夏の日には噴水で水遊びをしたり(これも怒られた)好きなことをさせてもらったわね。

乗馬だって得意よ!

この王都から南に馬車で2日程離れたところに我が公爵家の領地がある。領地にある本邸は王都の邸とは比べられない程大きい。広い敷地内ではお兄様と乗馬を楽しんだわね。いつか遠出に連れて行ってくれると約束はしたけど、まだそれは叶ってないの。



生まれてこの方風邪もひいたことがないのが自慢なんだけど、何故か病弱だと他の貴族からは思われてるみたい。

これは学園に入ってから仲良くなったマリー様とベルベリット様から聞いたの。もちろん正直に健康優良児だと教えたが、「他の人には言わない方がいいわよ」と仰られたので、数少ないわたくしの自慢の1つがが封印されたわ。


することがなく、ベットの上でゴロゴロしていると、執事のセバスが「第2王子からお見舞いの品が届いております」と、小箱を渡された。カードには「早く良くなってね。お大事に」と綺麗な文字で書かれていた。

その下に小さく「君に会いたいよ。ランチの約束忘れないでね」の文に胸がキュッとした。

健康優良児のわたくしが体調不良なんてありえないのにな。

不思議な感じがした。


中には色とりどりのマカロンの詰め合わせが入っていた。


学園でたまに見かけるル・・ルイ様は仏頂面で2人の側近候補の方以外では簡単に近づけられない雰囲気を醸し出してるお方で、キツい性格だと勝手に思い込んでたけれど、少し話しただけでも本当は優しい方だとわかった。

今日だってただの令嬢であるわたくしに気を使ってくださった。

見かけだけで判断するのはダメね。


お兄様以外では、歳の近い男性はいとこの隣国の皇子と会った時にお話しするぐらいだった。


学園に通うようになっても、挨拶以外で会話をしてくれる人はまだいない。

もっと友好関係を広げたいと思ってるのに、友人といえるのはマリー様とベリベリット様の2人だけ。

世間知らずなわたくしだけど、お友達になってくれた2人には感謝してるの。

だから、ルイ様達と知り合えたのは学園での友好関係が広がるチャンスかもしれない。



ただ1度だけ行った王城の庭園での会話は今も覚えているわ。

大丈夫。好きになったりしないわ。

あの優しいルイ様には迷惑はかけられないもの。


今度会った時には今日のお礼をちゃんと言わないとね!


もちろん美味しく頂いたわ。

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