沙織にセクハラ神を任せるのは心配です
「働いている時はどうしていたんだ? サラシとか巻いていたの?」
怜人が聞くと、央香は怜人に目線を合わせてきた。
「靖子の物を借りようと思ったんじゃが、残念ながらサイズが小さくて合わない。沙織の物もわしにとっては小さいので、沙織からスポーツブラを借りて何とか凌いでおる状態じゃ。スポーツブラは伸縮性があるものの、やはり小さいので付けている間は若干息苦しい」
「それはまずいな」
息苦しさを感じてしまうのは大問題なので、怜人の眉間に自然と力が入った。
「あと、大人の央香ちゃんって一張羅の和服しかないでしょ? 下着は勿論だけど、洋服もあった方がいいかなって思うんだよね」
「んー、そうだね。央香用の服が欲しいって母さんに頼めば、お金はもらえそうだな」
沙織の提案を聞き、怜人は考えながら言葉を発した。
「何! 靖子に金をもらえるのか? よっしゃあ! メイファンに課金じゃ! 確率アップ中のエジプシャンマウ神が出るまで回すぞ!」
央香は嬉しそうに拳を上げたが、
「服に使うんだよ!」
怜人と沙織が口を揃えて言った。
「……お前ら……息がピッタリじゃのう」
央香は頬を引きつらせ、上げていた拳をゆっくりと下ろした。
「買うとしたら早い方がいいよな。でも、女性用の服や下着ってどういうのがいいのかわからないし、俺が買いに行くのはかなり難易度高いなぁ」
自分が女性用下着売り場にいることを想像し、怜人は苦い顔になった。
「私が一緒に行くよ。場所は大宮の百貨店でいいよね? 早い方がいいなら明日とかどうかな?」
「いいの? こっちとしては渡りに船だけどさ」
「うん! 央香ちゃんに洋服を選んであげたいし、私の分も買いたいからね」
そう答え、沙織は怜人に微笑んだ。
「ならば、わしは沙織が使うEカップのブラを選んでやるとするかのう」
央香がニタニタしながら胸の前で両手を上げ下げすると、
「じっ、自分で選ぶよ!」
沙織はまた顔を赤らめていた。
怜人は二人のやり取りを眺めつつ、思案する。
央香が成人状態になっていられるのは八十分弱。大宮の百貨店で買い物をするのであれば、着いてから成人状態になってもらう必要がある。着替えはトイレなどでやれるだろうが、央香一人だと心もとない。
央香は沙織にセクハラなどの迷惑をかけそうなので、自分と央香だけで行くべきなのだろうが、やはり沙織に来てもらわないとまずいな。と、怜人は結論付けた。
「こんなセクハラ幼女を任せるのは申し訳ないけど、沙織ちゃんよろしくね。何か奢るよ」
「えへ。だったら、大宮駅で売ってるあのアップルパイをもらおうかな」
「沙織ちゃん、あれ大好きだもんね」
沙織の態度に怜人はホッとし、口元を緩めた。
「じゃあ、わしは沙織のアップルパイパイをもらおうかのう」
央香がにんまりした顔で両手をにぎにぎさせると、沙織は咄嗟に腕で胸を隠した。
「セクハラはやめろと言ったよな。おっさん」
怜人はそう言い放ち、操玉を握り締めた。
「ぎゃははは! あう! ぶはははっ! もう言わない……言わないからぁ!」
くすぐり地獄が始まり突っ伏した央香は、悶えながら怜人に懇願した。
沙織の前で操玉を使う場合、沙織は央香が好きだからか大抵やめるよう怜人に言ってくる。しかしながら、今回はセクハラされまくっているので、さすがの沙織も同情の視線を送っているだけだった。
怜人は操玉をテーブルに置き、軽く息を吐く。
「女性用の服っていくらぐらいするんだろう?」
誰に言ったわけでもなく、怜人は疑問を口にした。
自分の服は駿太と買いに行くことが多く、高い物だとTシャツだけで一万円とかするが、概ね上下あわせて五、六千円くらいで済む。母や姉の買い物に付き合うことはあっても、服の値段まで見ることはなかったので、怜人は全くわからなかったのである。
「ネットで調べたり、大宮の百貨店に行ったりして実際に見てみたんだけど、下着からコートまで揃えると五万円くらいはするかな」
沙織が平然と述べた。
「ご……五万円? 五万円で一着分ってこと?」
驚愕のあまり口が半開きになる怜人に対し、またもや沙織は当然かのように頷く。
「うん。冬服は着る物が多いからね。これでも安く見積もった方だよ。高級ブランドの物だと、五倍くらい値段が違うと思うよ」
「……五倍……二十五万円」
愕然と金額を口にする怜人に、
「私も実際に見て驚いたよ。中高生向けの服も高い物は高いんだけど、大人用の服は桁が一つ違うんだよね」
沙織は苦笑まじりに言った。
「大人の服……値段がきっついわぁ」
現実を受け止めきれず、怜人は手を額に当て顔を歪めた。
「これはあれじゃな。一万円の服は高いと感じるが、エジプシャンマウ神が一万円で出たら安く済んだなって感じるやつじゃな」
央香が言った。
沙織は不可解そうな表情をしたが、
「お前の言葉が刺さっている自分に、今驚いているよ」
納得してしまう自分が情けないと感じる怜人だった。
「お前もわしも、メイファンに脳を破壊されておるんじゃ。ここは大人しくメイファンに課金しておこうではないか。おっぱいはいずれ縮む……その時を待つ」
央香は言葉の最後に渋い声となり、薄笑いをした。
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