X(Twitter)300字小説集:毎月300字小説企画参加作品

伊古野わらび

第1回「初」:初夢の紳士

 届いた年賀状を確認していると、不思議な一枚を見つけた。

 わたしの名前のみ書かれた宛名面。こちらの住所も差出人の住所、氏名も見当たらない。

 通信面もシンプルで、


「あなたの初夢を頂きに参ります」


 ただその一文が「B」のアルファベット一字を添えて印字されていた。



 不思議というより不気味さや気障さが気にはなったが、元があまり引きずらない性格。美味しいおせちとお雑煮を食べて寝る頃には、すっかり忘れ去っていた。



 その夜見た夢は最悪だった。


 初夢と呼ぶには不吉で黒々とした夢だったが。


「どうも。予告通りやって参りました。悪夢大好き紳士です」


 急に現れたのは、やけに大きな口をした自称紳士。




 その後のことは、何一つ覚えていない。




【了】

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