家族の定義

宗治 芳征

プロローグ

 瞳の奥には青白いものが映っており、眼球が何度も左右に動いている。


 青年の前にはパソコンのディスプレイ、丁度、情報ポータルサイトで見ていたニュースに目を走らせていた。内容は、国民的女性アイドルが結婚するというものであった。


 青年はアイドルファンではなかったが、その女性アイドルのコメントの見出し、これからは普通の幸せを噛み締めていきたい、というものに目が留まって読み進めていた。


 普通の幸せ。


 ……普通とは?


 青年は思う。


 普通とは誰が定義するのか?


 マジョリティなものが普通なのか?


 マイノリティは普通ではないのか?


 青年は思う。


 努力せずとも、意識せずとも手に入るものが普通なのか?


 青年はその疑問を否とし、こう思った。


 普通とは実は贅沢なものなのだ、と。


 青年は無意識に鼻を鳴らしていた。財布をポケットへしまい、側に置いてあったダッフルコートを手に取り着用すると、暗い部屋から暗い闇へと消えていった。

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