┣吉田 文殊【幕間】


🔳性格

■戦略と度胸

 族社会で文殊を大成させたのは要領ではない。戦略と度胸だ。

 誰が相手でも気持ちでは引かない。覚悟なしに活路は拓けない。

 それが文殊の経験則、そして人生訓だった。

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の三


■人は殺せない

・過去に人死にはあるが、あくまで事故。

 洋や烏京のような「殺し屋」メンタルではない。


「おまえも殺す気なかっただろ」

「アホか。超本気やったわ」 

「殺気ですぐわかる。おまえは人を殺せない奴だ。

 昔の殺しも、相手の運がなかったって話じゃねーか」

                ──【幕間】魚々島 洋  ー千客万来ー 其の二



■禁酒中

・煙草は続けている様子。


 浪馬は強アルチューハイ、文殊は無糖のコーヒー。

 無機質な乾杯の後、二人は立ったまま、杯を傾けた。

暴走族ゾクどころか、不良ワルまで卒業かヨ」

「そこまで考えてへんけど、まあ一応な。

 飲酒運転でパクられたら、店にも迷惑かかるし」 

「警察にパクられるタマかよ、おまえが」

「しょーもないリスクは犯す必要ないちゅー話や」

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の二


🔳人間関係

■板挟み

・共通の友人である洋と浪馬の間で悩む。


 この二名が、《神風天覧試合》という闇の大会で争うというのだ。

 双方と戦った自分は、どちらの情報も持っている。魚々島は詮索しなかったが、浪馬に求められれば、答えを考えなければならない。

 それは畢竟ひっきょう、どちらに付くか決めることを意味する。

                   ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー


■洋との抗争の理由

「一年前、おまえにボロクソに負けた後や。

 アジトに乗り込んで来たあいつに、同じくらいボロクソにされた」

「まァ、魚々島相手じゃ、そーなるわナ」

「その時、考えたんや。

 こいつ相手にチームを鍛え上げたら、おまえに勝てるんちゃうかってな」  

「なーンだヨ、オレ対策だったってカ?」

「結局、一度も勝てへんかったけどな」

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の二


■浪馬の評価

「一度っただけだが、オレはおまえを評価してンぜ。

 軍隊みてーにチームを指揮する奴、初めてだったからヨ。

 それも、人数多かったウチが押されるくれー見事にヨ」

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の二


■浪馬の勧誘

・商売の夢を理由に、誘いを断る。


「オレは結局、魚々島には勝てんかった。

 その程度の才能ってことや。見切りつける理由には十分やろ」

「そーじゃねェだろ。

 オレにゃわかンぜ? オマエには才能がある。

 単にコマが足りなかっただけだ。魚々島をれる強えコマがヨ」

「そんなコマがあったら、苦労せんわ」 

「あるじゃねーか、目の前にヨ」

 缶チューハイを傾け、浪馬が自分の胸をつつく。


「文殊──オレと組もウぜ。

 オレとオマエで、新しいチームを作るんだヨ」 


「それが早すぎだってンだヨ。

 オマエの才能、バイトで腐らせるにゃ惜しすぎンだろ。

 終わるモンがありゃ、始まるモンがあるってな。

 オレとオマエが組めば、全国制覇だって狙えンだゼ?」

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の二


■《神風天覧試合》の情報を知る

「つーか、そんな長丁場なんか。《闇の天下一武道会》てのは」 

「《神風天覧試合》な。候補六名、全十五戦のリーグ戦だとヨ」

「サッカーの予選みたいなモンか。そりゃ長引くな」


「魚々島とは、いつヤるんや?」

「わからネー。順番は決まってねーンだよ。

 あーでも、《野試合》なら話は別かもナ。

 相手を見つけて喧嘩できりゃア、正式な試合扱いすンだとヨ。

 審判呼ぶとか面倒なルールはあっけど。コッチならいつでも勝負できる」 

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の三


■一幕の試合詳細を聞く

「こりゃ、最初から話した方がハエーな」

 浪馬の熱い語りに、文殊は耳を傾ける。

 それは自分と地続きとは到底思われぬ、怪傑たちの頂上戦だった。

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の四


■《天覧試合》の観戦へ

「……ちょっと残念やな。

 おまえらの対決、この目で見たかったわ」

「見せてやろーカ?」「マジかよ」

 あっさり言う浪馬に驚いた。今夜は何度、驚かされるのか。

「忍野にネジ込みゃ、何とかなンだろ。

 通訳連れてる奴だっていンだ。文句は言わさねーヨ」

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の四


■勧誘、継続

「だからヨ、文殊。オレと組もーゼ?」

「アホこけ。それとこれは話が別や。

 と言いたいとこやが……考えるくらいはしたる」 

「オッケーオッケー。

 オレの白熱バトルを見りゃ、考えも変わるッてモンよ」

「……おまえ案外、策士やな」

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の四


■輩との距離

 洋や浪馬の住む世界は、自分とは無縁だと思っていた。

 それが浪馬の誘いで一転、手の届く距離に近づいた気がする。

 《神風》候補の闘いが見たいのは本心だが、この縁は果たして吉なのか。それとも凶と出るのか。

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の四


■聞きそびれた過去

一年前に文殊が拉致し、洋が救い出した、あの男。

 ゾクのねぐらだった廃スタンドに現れた、青沼と名乗る男は、確かにこう言ったのだ。

 

「私は、八百万やおろずの関係者でして」──と。 

               ──【幕間】八百万 浪馬 ー遷客騒人ー 其の四



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