┣プロフィール・荒楠【幕間】

🔳最寄について

■洋と烏京の推察

「……アイヌか」 

 アイヌとは、樺太からふとから本州北部にかけて居住していた少数民族である。主に北海道のアイヌが有名であり、数々の地名にアイヌ語の由来を残す。狩猟文化、自然崇拝でも知られるが、現代では混血が進み、純血のアイヌはほぼ存在しない。 

「──知っているか?」

「いんや。魚々島が巡るのは本州近海だけだ。

 北海道は行ったことがねえし、アイヌもろくに知らねえ。

 青沼さん、何か知ってるか?」

「すみませんが、常識程度の知識しか。

 最近、先住民族の権利を求める活動がさかんだと聞いたくらいです。

 おそらく、この件には関係ないものと思いますが」

「──そもそもがともがらとは異なる立場の存在だ。

 裏社会でも聞いたことがない。

 輩のように、部族としてアイヌが生き残っているかと言えば──」

「けど、北海道は広いぜ?

 人知れず生き続ける部族の一つくらいあるかもしれねえ」

「──北海道ならば、通訳は不要のはずだ」  

「なら、北方領土だな。

 ロシアが実効支配してるから、日本語が話せないんだろ。

 どこにも情報がないのも、北方領土なら説明がつく」

「──確かに、理屈は通るな」

「いや、ちょっと変じゃないです?

 ロシアの実効支配は終戦後ですよ。百年も経ってません。

 仮にも日本人が、日本語を忘れますか?

 ましてともがらなら、国家ロシアとの関わりは薄いはずです。

 言葉が通じないという話は、どこか不自然に思います」

 青沼の指摘に、二人の候補は首をひねる。

「……孫の方は日本語ペラペラだったな。

 考えりゃあ変か……あいつら、どういう出自なんだ?」

              ──【幕間】魚々島同盟  ー手札交換ー 其の三


■海か山か?

「さっきの『海か山か』で言えば、どっちなんです?」 

「──山だな」「海だろ」

 真っ二つに別れた意見に、両雄が再び睨み合う。

「──羆の鎧に仮面だぞ。海で熊が獲れるのか?」

「落としちゃいるが消し切れない、潮の匂いがしたんだよ。

 海で暮らさなきゃ、あんな体臭にはならねえ」

「──あれは猟で鍛えた肉体からだだ」

で鍛えたかもしれねえだろ」


「蓮葉。おまえはどっちだと思う?」

 唐突に兄に話を振られ、蓮葉が小首を傾げる。

「……どっち……も……?」

「「──ううん??」」

             ──【幕間】魚々島同盟  ー手札交換ー 其の三


 

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