文化住宅のある街で

水色電軌

#1

湿った土の匂い

田んぼの中を通る道

町工場のリズミカルな歯車の音

耳で聞こえるウォークマンの音楽


夢の中では、海を超えてオーストラリアまで飛ぶことだってできる

夢の中では、僕は誰の助けもなく生きることだってできる


自転車の甲高いブレーキ音が聞こえる



天花粉の匂い

冷房からの涼しい風

洗濯機の音

夏の朝の黄色い太陽の光


夢の中では、三輪車で時速80キロを出すことだってできる

夢の中では、勇気凛々でたくさんの橋を渡ることだってできる


鳩が鳴き始める



大きな海の匂い

台風が近づいてくる時の微かな期待

強い風の音

素早く駆け抜ける分厚い雨雲


夢の中では、僕は向こう側にいた

夢の中では、この世界はもう終わっていた


トラックがクラクションを鳴らす



灯油の匂い

母のあったかい背中

外の雨の音

テレビからエコーするたくさんの音


夢の中では、僕の蒸気機関車は空を飛ぶんだ

夢の中では、果てしない壁が僕の街を囲うんだ


やかんに止まらない湯気が立つ

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