第27話 進展阻止

~ジャンの視点~


俺はマリーヌとドリンクショップへとやってきていた。


相変わらず店に入れない俺はマリーヌにモルニカという飲み物を買ってきてもらっていた。


モルニカはグリンダムの人々にとっては人気のある飲み物だった。


するとマリーヌが俺の元に戻ってきて、すまなそうにこう言った。


「ジャンさん、すいません、モルニカを買いに行ったんですけど、これが最後の一個だったみたいです。」


マリーヌがすまなそうに言った。


「そうなのか?なら俺はいいや、マリーヌがそのモルニカ飲んでくれ。」


するとなぜかマリーヌが慌てた様子だった。


「私だけ飲むなんてできませんよ。だったらジャンさん?半分こしませんか?」


「ああ、そうだな。」


「じゃあ、ジャンさん、先に半分飲んでください。私が残り半分をもらいますから。」


マリーヌはそう言うと俺にモルニカの入った紙コップを差し出してきた。


俺はマリーヌからモルニカの入った紙コップを受け取ると、その半分の口に流し込んだ。


さっぱりとした味わいが口の中に広がった。


「やっぱりおいしいな。」


俺は半分残した状態で紙コップをマリーヌに渡した。


マリーヌはとても嬉しそうにその紙コップを受け取ったのだった。


~ソフィアとミリアとナタリーの視点~


ジャンとマリーヌの様子を見張っていたソフィアとミリアとナタリー焦っていたのだった。


「大変です、ミリアさんナタリーさん??マリーヌちゃんたらジャン様との間接キスを狙っています。」


「マリーヌちゃんは先にジャン君に紙コップを渡して飲んでもらって、その後で自分が飲んで間接キスをしようという魂胆ね。」


「ええっ?どうしよう!!」


「安心してナタリー、私が何とかするわ。」


「愛しのジャン君とキスするのは私よ。」


ミリアが詠唱を始めた。


「かの地に眠る物をここに呼び寄せたまえ!!テレポ!!」


ミリアは転送魔法のテレポを発動したのだった。


するとマリーヌが手に持っていたモルニカが入った紙コップがミリアの手の中に移動したのだった。


「そっかテレポか。」


「ええ、危ない所だったわ。でもなんとかジャン君との間接キスは阻止できたみたいね。」


ミリアがジャンとマリーヌの姿を確認すると二人とも突然消えたモルニカの紙コップを探してキョロキョロしていたのだった。


「ところでお姉ちゃん、そのモルニカの入った紙コップどうする気??」


ミリアが慌てたのだった。


「えっ?どうもしないわよ。私がちゃんと責任をもって処分しておくわ。」


「お姉ちゃん?それちょうだい??私が後でお店の人に返してくるから。」


「もうナタリー??そんなにお姉ちゃんが信用できない。」


「うん、できない。」


~ジャンの視点~


俺はマリーヌとルーデル焼きの屋台にやってきていた。


ルーデル焼きを買ったマリーヌが紙袋を持って俺の所に戻ってきた。


「ジャンさん、ルーデル焼きです。」


マリーヌはそう言うと、紙袋から一つルーデル焼きを取り出した。


「ああ、ありがとう。」


するとマリーヌは突然よろけだした。


「あわわわ。」


ルーデル焼きが入った紙袋を落としてしまったのだった。


マリーヌが転んで買ってきたルーデル焼きが地面に落ちてしまった。


「ごめんなさい、ジャンさん。」


マリーヌがすまなそうに俺に言った。


「まあ落としてしまったら仕方ないさ。」


「ジャンさん、また半分こしませんか?」


「そうだな。また半分こにするか。」


「分かりました。それじゃあジャンさん、先にルーデル焼きを半分食べてくださいね。」


マリーヌはそう言うと最後の一つのルーデル焼きを自分の口にくわえたのだった。


~ソフィアとミリアとナタリーの視点~


ジャンとマリーヌの様子を伺っていたソフィアとミリアとナタリーはまたしても焦っていた。


ソフィアがナタリーに言った。


「大変です、ミリアさん、ナタリーさん?マリーヌちゃんが今度はジャン君と直接キスする事を狙ってるみたいです。」


「ええ?どうしよう?」


「ジャン様は私と結ばれるんです。当然ジャン様とキスするのも私だけです。マリーヌちゃんには絶対にさせません。」


ソフィアが再び詠唱を始めた。


「かの地に眠る物をここに呼び寄せたまえ!!テレポ!!」


今度はソフィアが転送魔法のテレポを発動したのだった。


マリーヌの口の中にあったルーデル焼きが消えて、ソフィアの手の中に移動したのだった。


ソフィアがジャンとマリーヌの様子を確認した。


「あっ?あれっ?ルーデル焼きが消えたぞ??」


ソフィアはこの様子を確認して安堵していた。


「成功です、ギリギリでしたがジャン様とのキスを阻止する事ができました。」


「良かった、もうマリーヌちゃんって見た目よりかなり大胆な子だから困っちゃう。」


「ええあの子は全然油断できないわ、隙あらばジャン君とのキスを狙ってくるぐらいだから。」


~ジャンの視点~


俺はマリーヌとルーデル焼きの屋台を後にしていた。


「なんだったんだろうな?突然ルーデル焼きが消えてしまったけど。」


「そうですね。」


すると俺の頭に冷たい水滴が落ちてきた。


俺は空を見上げた。


「うん、雨が降ってきたな?」


空はどんよりしていて黒い雲がたちこめていた。


そして雨がザアザアと本格的に降り出したのだった。


「こりゃ本降りになりそうだな。」


「あっ??ジャンさん、それなら私を傘を持ってきてます。」


そう言うとマリーヌはカバンから折り畳み傘を出したのだった。


マリーヌが俺に申し訳なさそうに言った。


「ただこの傘少し小さいんですけど。」


「この際しょうがねえな。」


~ソフィアとミリアとナタリーの視点~


「まずいわ、ナタリー?小さな傘に二人で入る気よ。そんな事になったらジャン君とマリーヌちゃんがいい雰囲気になってしまうわ。」


「今度はどうやって阻止するの?お姉ちゃん??」


「私の手持ちの魔法ではどうする事もできないわ。」


「私の魔法やスキルでもたぶん無理です。」


「え~お姉ちゃん??それじゃあどうすればいいの?」


「ナタリー、落ち着きなさい。私やソフィアさんの手持ち魔法ではどうにもできないけど、ナタリー?あなたならどうにかできるはずよ??」


「えっ??」


「ナタリー?あなたならドラゴンスキル、晴天の祈りが使えるでしょ。」


「あそっか。」


すぐにナタリーはドラゴンスキルである晴天の祈りを発動したのだった。


「オルディアスの力を持って雲に覆われた暗き空を蒼き清浄なる空へと変えたまえ!!晴天の祈り!!」


ナタリーのドラゴンスキルが発動した。


~ジャンの視点~


俺がマリーヌの傘に入ろうとすると、急に日の光が差し込んできたのだった。


俺が空を見上げると雨が一気に止んで、空には快晴が広がっていたのだった。


「あれっ?なんか急に晴れてきたぞ?これなら傘は差さなくてもよさそうだな。」


するとなぜかマリーヌが残念そうに言ったのだった。


「そ、そうですね。」


~ソフィアとミリアとナタリーの視点~


ソフィアがジャンとマリーヌの様子を確認していた。


「何とかジャン様といい雰囲気になるのは阻止できたようです。」


「ふー、うまくいって良かった。」


「ナタリーありがとう。おかげで助かったわ。」


~ジャンの視点~


俺はマリーヌとの買い物を終えて竜騎士団の本部であるハミスブルク城の前へと戻っていた。


「マリーヌ、今日はありがとな。色々と助かったよ。」


「いえなんか途中からはあまり役に立てなくてすいません。それにこの前のクエストの時もジャンさんに助けられてばかりで。ラズバー大宮殿の魔物討伐のクエストが成功したのは全てジャンさんのおかげです。私はずっとジャンさんに守ってもらってただけですし。」


「そんな事気にしなくていいさ。俺は大した事はしていないしな。」


「そんな事はありません。全てジャンさんのおかげなんです。ジャンさんはとってもすごいです。」


「そうかな?」


マリーヌは笑顔で俺に言ってくれた。


「はい!ジャンさんは本当に素敵な人です。強いし頭もいいし最高の人です。だから私ジャンさんの彼女さんになりたいです。」


「ああ、ありがとな、マリーヌ。」


マリーヌが顔を赤らめたのだった。


「あっいえ。」


そしてマリーヌは何度も俺にお辞儀をしながら本部を後にしたのだった。


マリーヌと入れ替わるようにナタリーが本部前に戻ってきたのだった。


「なあナタリー?今日はどこに行ってたんだ?」


するとナタリーはなぜか慌てて俺に答えたのだった。


「ちょっとお姉ちゃんやソフィアさんとグリンダムの町を回ってたんだ。」


「ふーん、そうなのか。それで今日はいなかったんだな。


「うん、そうなんだ。それよりもジャン、早く中に入ろう?」


なぜかナタリーにせかされるように、俺達は城の中に入っていった。


本部に戻った俺達に団長が声を掛けてきた。


「おおジャン、ナタリー戻ってきたのじゃな?すまぬがこの後団長室に来てくれるか?」


俺は自室に荷物を置いた後で、すぐに団長室に向かった。

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