第24話 クレシーの迷惑な思いつき
王都フェルミナの中心部にある冒険者ギルドにやってきたクレシーは配下の冒険者達にクエストの進捗状況を報告させていた。
「クエストの進捗状況を報告しろ!!」
「はっ!!400件のスライム討伐は完了しております。」
「よし順調だな。これならもっとスライム討伐のクエストを増やしても大丈夫だろう。よし来週からは今の倍のスライム討伐を依頼を出すように触れをだしておけ!!」
「はっ!!」
するとクレシー配下の冒険者がクレシーにこう言った。
「勇者クレシー様、住民達からの要望書がいくつか届いております。」
クレシーはあからさまに嫌そうな顔をした。
「要望書だああ??」
「最近ベークリーズ村周辺にオークが出没するようになったので、これを討伐して欲しいとの要望です。」
クレシーがこれを聞いて大声で怒鳴った。
「今はスライム討伐しか受け付けていないと言っているだろうが!!全くそんな仕事は農民にでもやらせとけばいいんだ!!!全く冒険者をなんだとおもってやがるんだ!!」
「次の要望書です。最近マルタ街道にてトロールが出没するようになり、これを討伐してくれとの事です。」
「そんな仕事は盗賊にでもやらせておけばいいだろうが!!!全く冒険者をなんだと思ってやがるんだ!!!」
「次の要望書です。ミザク山道にトレントが出没するようになったそうで、これを討伐して欲しいとの事です。」
「そんな仕事は商人にでもやらせておけばいいんだ。全く冒険者を何だと思ってるんだ!!」
「大勇者クレシー様?これらの要望はいかがなさいますか?」
「そんなふざけた依頼全部拒否に決まってるだろうが!!そんなもん冒険者のやる仕事ではない!!それにもしこの大勇者クレシー様に何かあったら、大陸中のクレシーファンクラブの会員達が嘆き悲しむ事が分からんのか。」
「そういえば大勇者クレシー様、ファンクラブの会員達からも要望がありました。」
「なに?会員達からの要望だと?そうか分かったぞ、ファンクラブの年会費を上げてくれと言ってきたのだろう。この大勇者クレシー様の為にもっと金を払いたいに違いないだろうからな。よし希望通りに年会費を上げてやるとしよう。」
「あ、いえそうではありません。」
「だったらなんだ?」
「はい、大勇者クレシー様ファンクラブの年会費が高すぎので、下げてほしいとの要望がきております。」
クレシーが大声で言った。
「大勇者クレシー様ファンクラブの年会費を下げろだと?たかだか年収の200%だぞ?この大勇者クレシー様の為ならそれぐらいみんな喜んで払うだろうが!!」
「大勇者クレシー様のおっしゃる通りでございます。大勇者クレシー様の為ならば年会費が年収の300%だろうが500%だろうが、喜んで支払う!!それが大勇者クレシー様ファンクラブ会員のあるべき姿のはずだ。」
「35号の言う通りだ!!たった年収の200%を払うだけではないか!!この大勇者クレシー様のファンクラブの会員ならばそれぐらい文句を言わずに払え!!全く!!」
「大勇者クレシー様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「なんだ??」
「なぜ大勇者クレシー様はホルキス王国の国民達の事をファンクラブの会員と呼ぶのですか??」
「当然だろう!!!この大勇者クレシー様は世界を救った勇者様なのだ。つまりこのホルキス王国にいる全ての人間がこの大勇者クレシー様を敬っているという事だ。つまりこの国にいる者たち全て大勇者クレシー様の為なら喜んで財産を差し出し、命を差し出しその身を差し出すんだ。ファンクラブの会員と言って差し支えないだろうが。」
「いいかこの大勇者クレシー様の命令こそが絶対なのだ!!なにせこの大勇者クレシー様はこの世界で一番偉いのだからな!!」
冒険者は少し困った顔で答えたのだった。
「は、はあ。なるほど。」
「では大勇者クレシー様??Sランククエストの迷いの森のクエストの依頼も入ってきておりましたがこちらも断っておきますか?」
「馬鹿者!!!いいか35号!!そのクエストはこの大勇者クレシー様の勇敢な姿をお前たちに見せるためにわざわざ受けてやろうと思っていたのだ。」
「そうでしたか申し訳ありません。そこまで深いお考えがあるとは知りませんでした。さすがは大勇者クレシー様です。」
「まったくこれだから能無しは困る。まあそれだけこの大勇者クレシー様が優秀すぎるという事だな。俺の優秀さについてこれないのはまあ当然だな。」
「この35号、少しでも大勇者クレシー様の優秀さに近づけるように精進いたします。」
クレシーが大声で命令を出した。
「いいか明日より迷いの森探索クエストを達成するために遠征を行うぞ!!!」
「大勇者クレシー様?遠征という事はかなり大人数での参加という事でございますか?」
「この大勇者クレシー様が先頭に立って手本を見せると言っているのだ。ホルキスにいる全ての冒険者が参加するに決まっているだろう。」
「全ての冒険者となると、5千人以上となりますが?」
「そうだ5千人の大遠征だ。この大勇者クレシー様の雄姿が見れないなんてそんなものは悲劇以外の何物でもないだろう。」
「しかし大半の冒険者達はクレシー様巨大銅像の制作に携わっています。そちらはどうされますか?」
「一旦中止だ。迷いの森の遠征が済んだら、冒険者達を夜中も休ませずにずっと働かせてクレシー様巨大銅像をつくらせればいい。」
「わかりました。」
クレシーの突然の命令により冒険者の大部隊が編制されたのだった。
クレシー巨大銅像の製作に駆り出されていた冒険者達も急遽集められて、迷いの森攻略の為の大遠征準備の急ピッチで進められたのだった。
ほとんどの冒険者達はほぼ徹夜でこの準備をさせられて、みな疲労困憊の状態だった。
一方のクレシーは一晩ぐっすり寝て翌日笑顔で冒険者達をギルドの前に現れたのだった。
冒険者達をギルド前の広場に整列させて大声で言ったのだった。
「ではこれよりSランククエストの迷いの森クエスト攻略の為の大遠征を始める!!迷いの森の最奥はその昔に盗賊達がレアアイテムの貯蔵庫として使われていたって話だ。この大勇者クレシー様が迷いの森を見事攻略してみせるだろう!!このSSランクの大勇者クレシー様の雄姿を楽しみにしておけ!!!」
「では出発だ!!!」
クレシーはそう言うと冒険者の大部隊の移動を命令したのだった。
5千人の冒険者による迷いの森大遠征が始まった。
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