第19話 ジャン争奪戦

俺が振り返るとそこには見知った人物がいた。


「あっ?ソフィア?それにマリーヌじゃないか。ここで何してるんだ?」


「ラズバーが貯め込んでいたお金をソフィアさんが回収してくれて、それを元に今までの不払い分のクエスト報酬を一気に支払ってもらったんです。結構まとまったお金が入ってきたので、大好きなルーデル焼きを買いにきたんです。」


「それは良かったなマリーヌ。」


そう言えばリール副市長もそんな話をしていたな。


「はい、全てジャンさんのおかげです。本当にありがとうございました。」


マリーヌが頭を下げて言ってくれた。


ソフィアも俺に頭を下げて言ってくれた。


「ジャン様、本当にありがとうございました。ラズバーに関係を迫られていた所を助けてくださって。」


「大した事はしてねえよ。ラズバーの野郎には個人的な恨みもあったしな。」


ソフィアが力強く俺の手を握りながら言ってくれた。


「そんな事ないです。ジャン様は本当に素敵な人なんです。誰よりも強くて頭も切れる最高の人です!!」


「はい、私もソフィアさんに賛成です。ジャンさんは本当にお強いですし、頭もいい方だと思います。ジャンさんは本当にすてきな人です。」


「ありがとうソフィア、マリーヌ、それじゃあ素直に喜んでおくよ。」


「はい。」


「ところでソフィアとマリーヌ?二人にも俺がちゃんと見えてるんだな?」


「この前看破のスキルを覚えたばかりなんです。」


「私も看破は覚えていますので。ギルド職員をやらされる前は普通に冒険者として活動していましたから。」


「ギルド職員をやらされる?」


「ラズバーの奴にギルド職員になるように命令されてたんですよ。」


「ああ、なるほどな。」


するとマリーヌはなぜかもじもじしながら顔を赤くしていた。


「ん、マリーヌ?どうかしたか?」


「ジャンさん?一つ聞きたい事があるんですけど?」


「聞きたい事??なんだ?マリーヌ??」


マリーヌが意を決したように俺に尋ねたように見えた。


「あのう??ジャンさんって今彼女さんっていますか?」


マリーヌは顔を赤らめながら俺に尋ねてきた。


「えっ?彼女か??いや今は特にいないけど。」


「それって本当ですか?」


「ああ本当だけど。」


するとソフィアがとても怖い形相でマリーヌに尋ねた。


「マリーヌちゃん?なんでそんな事をジャン様に聞くのかな?」


マリーヌが顔を赤くしながら恥ずかしそうに言った。


「それは、そのう。・・・わ・・・私!!ジャンさんの彼女になりたいんです?」


マリーヌはずっと顔を真っ赤にしていた。


「えっ??」


ソフィアが怖い顔でマリーヌに言った。


「マリーヌちゃん、ジャン様に冗談なんて言っちゃダメだよ?」


「冗談じゃありません。本気です。」


ソフィアがさらに怖い顔でマリーヌを見つめる。


「私が最愛のジャン様と結ばれる予定になってるんだから、マリーヌちゃんの出番はどこにもないから安心して。」


「ソフィアさん?ジャンさんの彼女になるのは私ですよ。」


「マリーヌちゃん、だからさっきから変な事を言っちゃダメだって言ってるでしょ。」


気のせいだとは思うが、なぜかソフィアとマリーヌが火花を飛ばしているように見えた。


するとそこにミリアさんが戻ってきた。


「ごめーんジャン君??遅くなっちゃった。あらソフィアさん?それにマリーヌちゃんだったかしら?」


そこにナタリーも戻ってきた。


「ごめーんジャン、行列ができてて遅くなっちゃった。あれ確かその子は??」


「ミリアさん?ナタリーさん?お久しぶりです。ジャンさんの彼女になる予定のマリーヌです。よろしくお願いします。」


「マリーヌちゃん?だからジャン様と結ばれるのはこのソフィアなの。」


なぜかミリアさんとナタリーの顔がひきつっているように見えた。


「ジャン君の彼女になる予定??」


「ジャンと結ばれる??」


でもたぶん気のせいだと思った。ミリアさんやナタリーがマリーヌやソフィアと火花を散らす理由が全くないからだ。


するとミリアさんがなぜか怖い顔でマリーヌに言った。


「マリーヌちゃん?適当な事を言っちゃダメなんだよ。」


「適当じゃありません。必ずジャンさんの彼女さんになってみせます!」


「ソフィアさんも、ジャンと結ばれる予定なんて言ったらみんな困惑しちゃいますよ。」


「ナタリーさん、ジャン様を一番愛している私がジャン様と結ばれるべきです。」


「ちょっとジャン?なんでマリーヌちゃん達がここにいるの?」


気のせいだとは思うがナタリーが少し怒っているように感じた。


「ああミリアさんとナタリーが買い物に行ってるうちに、ルーデル焼きを買いに来たソフィアとマリーヌとばったり会ってな。それで話をしてたんだ。」


「そうだ、ソフィアさんもマリーヌちゃんもう用事は済んだんでしょう?それだったらもう帰った方がいいと思うわ。」


「そうだね、ソフィアさんもマリーヌちゃんももう帰った方がいいと思うよ??」


「大丈夫です。ギルドには一人で帰れますから。それよりもミリアさんやナタリーさんの方こそもう戻られて大丈夫ですよ。ジャンさんのお世話は彼女になる私がしますから、安心してください。」


「そうです、ミリアさんやナタリーさんの方こそ帰られたらどうですか?ジャン様の案内は私が引き受けますから!!」


「そんな事を言わず、帰ろうねマリーヌちゃん。」


「大丈夫です。ナタリーさんの方こそ帰っていいですよ?」


気のせいだとは思うがミリアさん、ナタリーそしてソフィアとマリーヌの四人が火花を散らしているように見えた。


その後はミリアさんとナタリーにマリーヌとソフィアを加えた4人にグリンダムの各所を案内してもらった。


だがミリアさんとナタリーとマリーヌとソフィアの4人は常に火花を散らしているように見えた。


ミリアさんやナタリーがマリーヌやソフィアと火花を散らす理由はどこにもないからたぶん気のせいだろうな。


そして夕暮れの時間となった。


「ジャン君、今日はとっても楽しかった。今度はジャン君と私の二人で愛を育みましょうね。」


ミリアさんはそう言って歩いていった。


「ジャンさん、私ジャンさんの正式な彼女になれるように頑張ります。それでは失礼します。」


ソフィアが俺の手を握りながら言った。


「ジャン様、すいません。ギルドの仕事が溜まってるので、ここで失礼します。ジャン様?必ず私がジャン様と結ばれてみせますので。」


マリーヌとソフィアが歩いていった。


するとナタリーが頭を抱えて呟いたのだった。


「もうせっかくジャンと二人でグリンダムの町を歩けると思ってたのに、お姉ちゃんといいマリーヌちゃんソフィアさんといい、なんでこうなっちゃうの?」


俺はなぜナタリーが頭を抱えているかは分からなったが、ナタリーを励ます事にした。


「まあいいじゃないか、俺は結構楽しかったぜ。グリンダムの町に活気が戻ってたみたいだしな。」


するとナタリーの笑顔が戻ったのだった。


「ジャンが楽しんでくれたのなら良かったかな。」


「ああ俺はかなり楽しかった。」


「うん、決めた、私絶対に負けないから?」


負けない??どういう意味だろうか?


俺はナタリーが何の事を話しているのかは分からなかったが、ナタリーの元気が戻って良かったと思っていた。


「さあそれじゃあ帰ろうか?」


「ああ、そうだな。」


俺達は帰路についたのだった。

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