第5話 土下座
少しして団長達が俺の所にやってきたのだった。
「ジャン本当によくやってくれた。」
「ええ、ありがとうございます。このままラケルを締め上げてやりましょう。」
すると盗賊王ラケルが俺達の方に進んできたのだった。
ラケルを囲むように配下の盗賊達が付き従っていた。
俺がラケルを睨みながら言ってやった。
「ラケル??やっとさしの勝負を挑みにきたか?」
だがその後の反応は俺達を困惑させるものだった。
ラケルは俺達の前で地面に座ると土下座を始めたのだ。
ラケルに地面に頭をついてこう言った。
「降参だ!!俺たちが悪かった。」
俺はあっけに取られていた。
「はあ??」
ラケルが俺に土下座しながら言った。
「盗んだものは全て返す!!!ごめんなさい!!ほら、お前らも謝れ!!」
ラケルの部下の盗賊達も土下座を始めるのだった。
「すいませんでした。」
「ごめんなさい。」
「ふざけるな!!今さらごめんなさいで済むと思ってるのか。クレシーの手下を見逃すわけないだろうが!!!」
「違う、俺たちはクレシーやラズバーの手下じゃないんだよ。」
「さっき大勇者クレシー様とかほざいてただろうが!!!思わせぶりな事も言ってただろうが!!」
ラケルは必死に弁明を続けたのだった。
「勘違いしないでくれ!!俺達は本当にクレシーやラズバーの手下じゃないんだ。勇者クレシーがここまで大きな力を手に入れるとは想像できなかった。だからこれからクレシーを喜ばせて奴に取り入ろうと思ってただけだ!!!」
「ならなぜ竜にまたがる無能共なんて言葉を知ってた??」
「クレシーやラズバーの野郎はあちこちで竜にまたがる無能共と喚き散らしているんだ。嫌でも耳に入ってくるぜ。」
「じゃが勇者クレシーに取り入ろうとしているんじゃろう???」
「そうだ、これからクレシーに取り入ろうとしてるだったら大して変わりはしないだろうが!!」
「いやもう奴に取り入るのは止める事にした。クレシーやラズバーがどうしようもないゴミ野郎だという事はよく分かった。」
「盗賊のお前らがそれを言うのか?」
「実際にクレシーやラズバーがひどい奴らだっていうのは本当だろう?あんた達もそう思ってるだろう?」
まあ確かにそれに関しては同意見だった。
「ああ、クレシーやラズバーはとんでもない野郎だ。」
「クレシーやラズバーなんぞとお近づきになってもいいことなんぞ何もないぞ!!」
「ああ今回の事でよーく分かったよ。クレシーやラズバーは大悪党だ!!あんたたちこそ正義だ!!」
「旦那?本当に強いな?名前を教えてもらえないかい?」
「ジャン・リヒターだ。」
「おお、ジャン様、いやあんたは本当に強い!!!オークの軍団を魔法で一撃なんてあんたじゃなけりゃできないぜ!!!さすがに誉れ高き竜騎士様だ。俺たちはジャン様の正しさや強さに気づけて本当に良かったぜ。」
「ちっ!!現金な野郎だな。」
「ラケル??ワシらを褒めてごまかそうとしても無駄じゃぞ。お前達のせいで少なくない家が火事で焼けてしまったんじゃぞ?怪我をした人達もたくさんおる。」
「そうだ、お前らはカリーナの人達に迷惑をかけた。」
「分かった。焼いてしまった家は全て弁償しよう。ケガをした人達に治療費も出そう。」
「ジャン様、このラケルが愚かだった。大英雄のジャン様!!どうかこの俺達に慈悲をくださいませ。」
ラケルは地面に頭をつけてひたすら俺に謝り続けたのだった。
「ジャン様、本当にすいませんでした。」
「そうだお詫びの印にジャン様や団長さんにもお金を払おうじゃないか。」
ラケルが部下達にこう指示を出した。
「おい!!お前達、金を持ってこい!!」
盗賊達が俺達の前に金貨を運んできた。
俺達の前にたくさんの金貨の袋が積まれていった。
「ラケル?お前らは本当にクレシーやラズバーの手下じゃないんだな?」
「ああ、本当に本当だ。俺達はクレシーやラズバーの手下じゃない。」
俺はため息をついた。そして団長に判断を委ねる事にした。
「団長?どうします??」
「ふむ、そうじゃのう?」
「ラケルに尋ねる??クレシーやラズバーには二度と関わんと誓えるか??」
「ああもちろん誓うよ。あんな無能者のクレシーやラズバーには2度と関わらないと誓うよ。」
「本当に本当じゃな?」
「本当に本当だ。」
「ふむ、分かった。では今回は見逃してやるからとっととこの町から去れ。」
するとラケルが大声で指示を出した。
「野郎共!!撤収だ!!引き上げるぞ!!!」
そして盗賊達は引き上げていった。
「団長良かったんですか?」
「ラケル達はクレシーやラズバーの手下ではなかったようじゃし、詫びをいれて補償まですると言ってきた以上ワシらは何もできんよ。もうホルキス王家に仕える騎士ではないのじゃからな。国外追放を食らってしまっておるし、連中と大して変わらん。まあ何より憎いのはクレシーやラズバーじゃろうて。」
「そうですね、分かりました。」
「それじゃあ改めてナタリーの話を聞くとするかのう。」
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