第6話 謎の大量死
永山は久しぶりの休みに千葉県の洲崎神社に来ていた。この神社は安房国の一之宮だが、もう一つある一之宮の安房神社と比べると参拝者も少なく境内は閑散としていた。社務所は閉まっていて、書き置きの御朱印は料金箱の下の棚に置かれていた。神社は急な石段を登ったところにある。
永山は息を切らせながら、石段の中程まで来たところで一羽の白いかもめが羽をばたつかせているのを発見して立ち止まった。かもめはそのくちばしから血を吐き出していた。永山は可哀想だとは思ったが、そのかもめを避けるようにして残りの石段を登っていった。
頂上からの眺望は素晴らしかった。青くきらきら輝く海の向こうに伊豆半島、そして美しい富士山が見えた。永山は報道部門の新聞記者だった。
深夜まで続くハードな勤務の合間のひと時の休日を愛車スープラを駆ってのドライブだった。御神体に向かって参拝しているその時、背後で悲鳴のような鳴き声とともにバタバタという大きな音が聞こえて、永山は振り返った。
今まで見たことが無い異様な光景が大空で繰り広げられようとしていた。陸に向かって、飛翔する鳥の大編隊の両端の形が突然崩れ始め、推進力を失った鳥たちが次々に海に落下していった。
「いったい何が起きているんだ」永山はあの一羽のかもめの断末魔を思い出していた。新聞記者としての本能が大事件の始まりを告げていた。
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