第22話 その日まで

チャペルから出てくる男女の幸せそうな顔を眺めながら、元彌と奏は微笑む。

隣には鼻を啜るRINとNANAがいた。

ゆっくりと階段を降りる2人は、元彌達に手を振り、合図を送る。すると、RINがすかさず前に出る。

「ブーケは私の物よ」

その勇ましさに、三人は笑う。

「もっくんも前に来て」

YUUに促されて元彌が前に出る。女の子の集団に変では無いかとたじろぐ元彌を横目にRINが不貞腐れる。

「もっくん、背が高いから有利じゃん」

「いや、この中で争ったら俺、全員から敵に回される。取れたらすぐRINに回すよ」

「よし、頼んだ」

2人でこそこそと打ち合わせしていると、YUU達はブーケではなく胸ポケットからクマの付いたランチャーみたいのを取り出し、空に向ける。

「えっ!?そっち!?」

「何あれ?初めて見た」

「最近の流行りなのよ。引き金を引くとクマのぬいぐるみがパラシュートつけて落ちてくんの。これはますますもっくん有利だわ。頼むわよ。私の結婚はもっくんにかかっている」

「責任重大過ぎる・・・」

緊張しながら待ち構えていると。ポンっという思ったより軽い音でクマが飛び出し、ふわふわと宙を舞う。ゆらゆらと落ちてくるウェデイングドレスを着たぬいぐるみを元彌は難なく取るとすかさずRINにパスする。

「やったー!」

自分で取ったわけでもないのに、クマを握り締めガッツポーズを決める。それをみた元彌は少し呆れながらも笑う。

「あれ?もっくん・・・良かったね」

RINが指を指しながらニタニタ笑う。向けられた指先を見ると奏がタキシードを着たクマを握りしめ、苦笑いをしていた。

「次は私達ね。何なら、合同でやる?」

揶揄うように肘を当てるRINに、じゃあ、早く見つけろよと言い返し、奏の元に走って行く。後ろでRINが怒っている様に思えたが、元彌の耳には届かない。

真っ直ぐに奏の元へ走り、そのまま抱き上げる。

「ちょ、元彌!降ろして!」

「奏!いつか俺達もしよう!俺と結婚してっ!」

恥ずかしそうに身じろぐ奏は、その言葉に動きを止める。隣にいたNANAは口に手を当てきゃーっと小さな声で叫ぶ。周りもざわつき、明らかに視線を浴びているが元彌は奏だけを見つめる。

「奏・・・だめ?」

なかなか返事が返ってこない奏を見上げながら、少し悲しそうな表情を浮かべると、奏は元彌の頬に手を当てて、満面の笑みを浮かべる。

「バカだなぁ。断る理由がどこにあるの?僕を幸せにしてくれるんでしょ?」

その言葉にパッと顔を明るめ、力強く頷く。

「奏を一生かけて幸せにする。奏、愛してる。俺と結婚して」

「・・・はい」

奏の返事に周りが歓声を上げる。NANAとRINも良かったねと拍手を送る。

2人は互いに見つめ合い、微笑み合う。

「おい、主役はこっちなんだが・・・見ろよ、嫁まで泣いてる」

YUUの言葉に、2人は我に返りごめんと呟き、慌てて奏を降ろす。YUUの隣ではハンカチを握りしめ泣いてる彼女がいた。

「ほら、披露宴行くぞ」

YUUは彼女の肩を抱き、歩き始める。その後を笑いながらRINとNANAが付いて行く。奏と元彌も手を繋いで歩き始める。

「奏、俺、幸せだ・・・」

「うん。僕も・・・」

微笑み合いながらキスをすると、前方からイチャ付くのは辞めて下さーいと声がする。2人はぎゅうと握り直すと小走りにみんなの元へ走った。

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