反転したセカイの中で。

首領・アリマジュタローネ



 授業中、ノートを開いて「お腹空いたなー」とぼんやりと考え事をしていると、クラスの女子と目があった。

 笑顔を見せて見つめ返すと、すぐに目を逸らされた。

 顔を青くしている。

 最近よく目が合うけれど、ぼくに気でもあるのかな。



「ねぇ、琥珀こはくくんって気になっている女とかっているの?」


「えっ、急になんだよ?」


「別に? 彼女とかいそうだし。モテるでしょ?」


「いやいや……モテないから。あと気になってる人も今はいないかな」



 休み時間、移動教室に向けて教科書を整理していると、クラスメイトの波瑠斗はるとさんが話しかけてきた。

 ぼくがそう答えると「へー……」と鼻の下を伸ばしている。

 一体なんなんだよ。



「さっき波瑠斗さんに話しかけられてたけど、一体なんの話をしていたの?」


「別に。大したことないよ」


「いいよな、波瑠斗さんに話しかけられてさ。琥珀はかっこいいもんな。肌は白くて艶々だし、髪はサラサラだし、良い匂いだってするし、スタイルだって良い。羨ましいよ。オレなんか最近太っちゃってさ……」



 友達の瑞希みずきが波瑠斗さんのことを好きだってことをぼくは内心気にかけていた。

 もしも波瑠斗さんがぼくをデートに誘ってきたら、瑞希との間に亀裂がうまれてしまう。

 一体、どうしたらいいんだろう。



「あ、三年生! カッコいいね。名前なんていうの?」



 廊下を歩いていると、金髪ギャルっぽい女性が話しかけてきた。

 一年生の先輩だろうか。

 ぼくの全身を舐め回すように見ている。



「あたしの先輩がさ、喫茶店経営しているんだけど、今度遊びにいかない? 安くするよ。そのあとカラオケいこうよ。あたし、歌上手いよ」


「……すいません、結構です」


「えー。ま、いつでも遊びたくなったら声かけてね」



 教科書を抱きながら、瑞希と一緒に歩き去ってゆく。

 毎度毎度、ああやって声をかけてくるのが本当にイヤだ。

 ハッキリと強く断りたいのに、言ってしまえば後々なにか怖いことに巻き込まれそうだ。

 とにかく出来るだけ関わりたくない。



「……怖いんだよな、あの人」


陽咲也ひさやさん? でも、ダンス部の部長しているらしいし、生徒会にも入ってるから頭もいいぜ。エリート一家の長女らしいし」


「……うーん」



 だけど、ぼくはあまりチャラチャラしている人は好きではなかった。

 ああいう女はすぐ浮気するに決まっている。

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