推しVtuberのために最強になったダンジョンゲームが現実に現れたんだが、モテすぎて困ってます
君のためなら生きられる。
Phantom顕現編
第1推活 ついに俺の出番ってコト?!
俺、二鷹世界はダンジョンオンラインゲーム「Phantom」のイベント最高難易度【古龍討伐】をソロで舐めプしながら、別モニターで3人組アイドルVtuber「みら〜じゅ!」の配信を見ていた。
「古龍まぢやば、つっこみまー!笑」
「ぬぬ、そんなに前に出たら危ないっぴ!」
「もー! ついていくしかないのです」
彼女達も「Phantom」をプレイしているが、相変わらず危険なプレイングだ。
装備やステータスも重要だが、このゲームはキャラコンと戦術がかなりものを言う。
「俺の出番は近いかもな。そろそろ切り上げてロビーで待っとくか」
俺は1人ごち、サクッと古龍討伐イベントを終わらせて、実況を眺めることにした。
彼女達に出会うまでの人生を振り返ると、それはそれは淡白なものだった。
学生時代に熱中するような部活や趣味もなく、恋愛から逃げたまま就職し、付き合いで風俗に行き、たまに自分でも風俗に行くようになり、会社に出勤し、クーポンで風俗に行く日々。
しかし、好みのタイプなわけでもないけど、営業ラインを熱心にくれる未来ちゃんとの濃厚な早漏プレイが終わり談笑していた時に、人生の転機が訪れた。
「最近私さ、Vtuberにハマってるんだー。世界君ってVtuberみてる?」
わざとらしい笑顔で未来は賢者タイムの俺に話しかけた。
「なんか絵がカクカク動いてるやつでしょ。たまにショートに出てくるのを流し見してるくらいかな」
「そうそれ! Vtuber知ってるだけでも合格! ほらみて、可愛くない?」
そういって未来はスマホの画面を向けてきた。
「あー、うん。スマホゲームとかに出てきそうなキャラだね」
艶のあるピンク色のセミロングに、色白で少し茶色がかった瞳と、小さな鼻。服はシンプルなミニスカートの制服姿で、大きな胸の膨らみの上に髪と同じピンク色のリボンがついている。一人だけの絵なので比較対象がないが、等身からするに背も低めの、ロリ巨乳ポジションなんだろう。正直いってスコよりのスコではあった。
「でしょ! 私の推しなんだー、美鶴ちゃん! ほら、ゲーム実況してるんだよ。チームでアイドル活動もしてて」
「美鶴? 名前が?」
「そう!」
「古風な名前だな。中身ババアなんじゃないの?」
「そんなことないって! ……多分。ほら、見てみてよー」
未来はYouTubeを開き、アーカイブを再生する。Phantomの実況動画だ。俺は目と耳を疑った。リアルタイムでコメントに返事をしているからか、アニメキャラとの会話が成立し、そこに本当に美鶴が生きているように錯覚したのだ。
「え、すご。てか声可愛いな」
「でしょー?!」
「喋り方の癖強」
「それはもう様式美なの、慣れたらこの感じも好きになるよ!」
「ふーん」
120分コースだったのに、気付くと俺は残り時間の全てで美鶴の実況に食いついていた。
家に到着してからYouTubeで検索すると、今も配信中だった。俺はテイクアウトした照り焼きハンバーガーを頬張りながら配信をクリックする。
「んぬぅわー!! か、勝てないっぴぃ。やっぱり凛さんと桃さんがいないとダメっぴかあ。でももう一回っぴぃ!」
アーカイブとは比較にならない音質と画質の美鶴がそこにはいた。
Phantomのキャラメイクも自分の姿そっくりに作られている。画面右下で表情豊かにゲームを楽しむ美鶴を、気づけば俺は4時間見続けていた。
そして美鶴が所属するアイドルVtuberチーム「みら〜じゅ!」にハマった俺は、彼女達をPhantomでキャリーするために風俗を減らして、出勤と睡眠以外の時間のほぼ全てをレベリングと課金に費やした。
気付くと俺はPhantomで世界最強のプレイヤーになっていたのだ。そして今。
「ぬわー! 撃沈っぴ……」
古龍の第一形態すら倒せずに、みら〜じゅ!メンバーは意気消沈した。
元気出して! と、スパチャが飛び交っている。俺の推し、美鶴はみら〜じゅ!の一番人気だ。癖になる可愛さをしていることに定評がある。
わかる、わかるぞ。同担ウェルカム。
「皆スパチャありがとなのです。ですが、ここはやっぱりリスナーさんの力を借りるしかないかもです。4人までこのダンジョンは入れるから、1人だけになっちゃうけど、お願いしたいのですー!」
凛の提案にコメント欄が賛同している。
凛は「なのです」が口癖の、黒髪ポニーテールで日本刀を持つ高身長の女子高生だ。Phantomでの武器も日本刀になっている。
真面目なキャラだからだろうか、ギャップからエッチなファンアートが多い。神絵師様、いつもありがとうございます。
「コメ欄ビビってね? まあしゃーなしか。あーしら3人の姫プっぷりで古龍イベをキャリー出来るって、相当つおくないとだもんね。あ、美鶴っちの王子様呼んでよ、どうせ見てるよ笑」
少しギャルの入った桃が言った。潜ってるのがバレた。
桃はミルクティーカラーにウェーブがかかっていて、インナーカラーの色が毎日変わる。朝見るネット占いのラッキーカラーにしているらしい。制服のボタンははだけて張りのある胸が露出している。
立ち絵のネイルがPhantomで再現できない事を不満に思い、Phantom運営に毎日メールしてアップデートさせようとしているらしい。無茶言うなよ。
凛と桃の表情がニヤニヤしたものへと変わり、美鶴は照れていた。
可愛い!!!!!!!
んんんんんいっぱいしゅき!!!!!
「ぬぬぬぬ。ブ、ブラッディポン酢たん、いますかっぴ?」
「王子様、やっぱりブラポンっちなんだーウケ笑」
「美鶴ちゃん、リスナーにガチ恋したらアイドルVtuber失格なのです」
「えええ?! 違うっぴ、これは罠だっぴ〜」
コメント欄も美鶴いじりで荒れている。
あまりの神対応に限界オタクを超え、逆に冷静になった俺は感謝の上限赤スパを送った。
ブラッディポン酢 50000円
いつでもいけるよ
「にょわー! 上限赤スパだっぴぃぃい!」
「ブラポンさん、ありがとなのですー!」
「ブラポンっち、美鶴っちじゃなくてあーしに推し変しない?笑」
「だ、だめっぴ、ブラッディポン酢たんは美鶴のっぴ!」
大手じゃないVtuberチームだからこその発言だが、俺はもう天にも昇る思いだった。
それからのキャリーっぷりは我ながら見事だった。
美味しいところは3人に渡して、閲覧しているファンも楽しめるように無双するだけでなく小ネタも挟み、イベント最高難易度の古龍討伐を自分だけでなく、みら〜じゅ!メンバー全員ノーデスでクリアした。
視聴者もPhantomのプレイヤーが多いため、そこで手に入ったアイテムや素材をリスナーにもプレゼントして空気が悪くならないように配慮もした。
リスナーにもみら〜じゅ!メンバーにも感謝され、俺は自分の居場所はここなんだと実感した。
金曜日の深夜1時。仕事の疲れとゲームの達成感から、幸福な気持ちに包まれながら安眠した。
翌朝。みら〜じゅ!のオリジナルソングのアラームで目覚めた俺は、フラフラと洗面所に向かい顔を洗う。キッチンで電子ケトルに水を汲み、インスタントコーヒーを作りながらテレビをつけた。冷凍してある食パンをトースターに入れて、思いっきりメーターを回す。
「深夜26頃、突如発生した謎の塔は世界各国で発見され、現在確認されているだけでもその数は1500を越え、各国で調査中です」
「謎の塔? 朝からフェイクニュースのバラエティ番組かよ、ややこしいなあ」
俺は淹れたコーヒーを運びながらモニターに向かうと、そこにはたしかに各SNSから持ち寄られた塔のようなもの、というより、Phantomに出てくる塔タイプのダンジョンにそっくりな何かが乱立していた。そしてそれはフェイクニュース番組ではなく、毎朝土曜に見ていたニュース番組での報道だった。
「え? ホントなの?」
突然心臓が高まり現実感が押し寄せる。コーヒーを乱暴にテーブルに置き、カーテンを開けると___
「うお!!」
6階の自室から見えるマンションの公園だった場所から、巨大な塔が聳え立っていた。よくみると遠くに見える山からも塔がたっている。
「……あ、これ夢か。流石にPhantomやりすぎたわ、あはは」
俺はソファーに座り、コーヒーを啜った。うまい。現実と違わぬ香りとコクだ。試しに頬を叩いてみたが、しっかり痛い。
チンッ!
「やべ」
トースターから音がしたので向かうとパンが焦げていた。いつもはコーヒーを淹れながら頃合いを見てパンを出していたので、メーターを巻きすぎているせいだ。
バターを塗ってから一口齧ってみるが、しっかりと焦げたパンの味と香りがする。
「苦い。リアルすぎだろ、明晰夢ってやつか?」
「臨時ニュースです。先ほどお伝えしました謎の塔について、天野内閣総理大臣の緊急会見が行われると情報が入りました。直ちに映像が切り替わりますので、チャンネルはそのままでお待ちください」
「へー」
俺は半信半疑だが夢を楽しもうと思い、焦げたパンとコーヒーの黒黒朝食を食べながらテレビに耳を傾けた。
すると、どこからそんなに早く集まったのかわからないが、記者達に囲まれながら内閣総理大臣が台本を持って現れた。
「えー、深夜26時頃、突如世界に発生した塔について、我が国の調査と世界各国の情報を擦り合わせた結果、これらはPhantomというオンラインゲームに出てくる架空のダンジョンだと判明致しました。えー、内部に侵入可能なのは、これまでにPhantomを登録していたユーザーのみとなっております。これを受け、国連は世界同時緊急事態宣言を発令し、この未確認建造物体、呼称Phantomの調査に協力して頂けるPhantomユーザーを募集致します。報奨金や詳細については厚生労働省HPをご確認下さい。またこの緊急事態宣言においての外出制限等はありませんが、私有地に塔が発生した場合、所有者の許可なく国家が調査致しますのでご了承頂きたく願います」
「さ、流石は俺の夢だ。くだらねーわ。ハムのせよ」
俺は冷蔵庫に向かい、焦げたパンにハムを乗せた。せっかく夢なので全部のせた。ソファーに戻り、Twitterを開く。皆塔の話題で持ちきりだった。夢の中の住人の解像度高いな。
「現実にPhantom出現かー。ブラッディポン酢様の出番ってコト?! っと」
せっかくなので俺も祭りに参加しツイートする。すぐにいいねとコメントがついた。
やったれwwww
ブラポンたんがいれば安心だわ、日本に住んでてよかったーww
大金持ちになれるんじゃね?wwwダンジョンのお宝もあるだろうしwww
などなど。
しばらくTLを眺めていると、DMが来ていることに気付いた。
「dmなんて珍しいな。……え?」
DM一覧を開くと「みら〜じゅ!公式」からのメッセージが来ていた。
☆☆☆
ご愛読ありがとうございます!
君のためなら生きられる。と申します。
第一話、お楽しみいただけましたでしょうか?
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