70歳の私を支える、心に残る5つのお話

mrs.marble

第1話

 2023年4月25日になると、私は70歳になる。

 よく聞く人間皆平等、平等権を持ち平等原則のもとに……。

と、まあいきなり平等権を持ち出し、何が言いたいのかと言うと、すこぶる簡単なことなのだ。

 私は70歳になりたくない。その日その時が来れば皆平等に1才ずつ分け与えられる訳であり、「おめでとう!」と称賛もされる。

 確かに私は子どもたちからケーキをもらい、孫たちからは折りたたんだ紙に書かれた、女の子の絵とやっと覚えた平仮名のメッセージを受け取るに違いない。

 そして私はその紙の裏に日にちと孫の名前を書き、宝箱の中にしまうのである。

 更に夫が淹れたコーヒーでケーキを食べるであろう。間違いはないのだ。

 そして私は70歳を迎える。

 抵抗しても無駄なことであると分かりつつ、毎年抵抗の真似事をするのである。


 とまあこんなことを書き連ねてみました。

 これで私がヘソ曲がりな性格であることを分かっていただけたのではないでしょうか。

 三つ子の魂百までもという格言がある以上、直らないのでしょう。

 今回はこんな私が体験した、5つの心に残る素敵なお話を紹介させていただきます。ヘソ曲がりでも70年の間に5つも出会えた、ホンワカ素敵な出来事たちです。

 とはいえ、長い年月をかけ徐々に素敵に仕上がった話ではなく、全て一瞬に起こった話たちなのです。



 では早速1つ目、これは随分と昔、私が30歳代のことです。

 住民票の写しを貰いに、市役所へ向かう途中の、横断歩道でのこと。

 白い小さな犬を連れた80歳位のおじいちゃんが、私とは逆方向に歩いていました。私は右側の横断歩道を南から北へ、おじいちゃんと犬は左側の横断歩道を北から南へ、信号が青になりお互い歩き出して直のことでした。

 おじいちゃんは足が悪いのか、杖をつきながらもおぼつかない足取り、そのおぼつかない足に犬がじゃれついたのでした。『あぶないなあ!』と思いながら見ていると、「抱っこか?」と言い、おじいちゃんは犬を抱え上げました。

『えっ! 大丈夫?』と心配していると、ゆっくりゆっくり、おじいちゃんと抱かれた犬は横断歩道を渡り終えて行きました。

 たったこれだけの話なのですが、何故か何十年経っても忘れられない光景であり、忘れられない出来事の1つなのです。

 2話目はとても幸せになれたお話です。

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