凶の祓い手 ーまがをはらいてー

くうねるあそぶ

1  仕込み



 闇夜のとばりに煌めく都の光。人々の命の輝きと差異はないほどそれもう煌いてる。

 赤や黄色、緑に青、色彩溢れる生活のともしびは空に散らばる星々の輝きにも劣らない。

 山々や森に囲まれている都は、まるで煌めく湖の様に神秘的なまたその場には不自然な様相で浮かびあがっていた。

 東国ヤハト。この都を治めそして長い歴史を持つ国の名前だ。

 都の大きさや人の多さ、そして圧倒されるような街並みの建築物。

 一歩都に踏み入れれば積み重ねられてきた歴史と、人々がどれだけ栄えてきたか肌で感じられる。

 うに日が暮れているというのに都の活気はやまないのは、それらを物語っているようだ。

 堅牢な都で人々は火を灯し続ける。その姿はどこか無意識にを恐れているようにも見えて仕方がない。眠ることを知らず、休むことをしらず、都は動いている。

 それは、ただ積み重ねてきた繁栄を今という栄華を極めんとする現れなのか、命を象ったような灯は、煌々と都の空に淡く立ち昇っていた。

 しかしその反面、影は地面を這うように強く色濃く都に染みついていた。

 

 

 少し高い位置から都を眺める者は、闇より暗いその影をひしひしと感じている。

 夜に溶け込むような黒装束を纏い、口元は布で覆い一見して人相が解らない。

 身のこなしを良くするため、衣服はきゅっと締め付けたるみも無い。腕や脚、胸部のでさえ黒塗りだ。

 腰に携える得物は一つ。脇差ほどよりは少し長いか――、その一振り。

 彼は街並みの様相に目を向け瞳にその煌きを映し目を細めた。

 

 都を囲む山々から吹き下ろされる夜風がその者の髪を撫でる。

 毛先が揺らめくと同時に、街を警邏けいらする篝火かがりびも短い音を鳴らして消えかけた。

 ふっと風が吹き去ると、その黒装束の者は音もなく姿を消した。




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