シーズン3

26,飯テロ、御免被る!

 一通り、確認し終えた俺は、両親を失い帰る場所を失った山村やまむら絵美えみ愛車ハーレーのサイドカーに乗せて湾岸高速に乗り、自宅のある千葉県浦安市に向かっていた。


 自宅に着くと玄関で腕を組んで待っていた

咲耶さや義姉ねえに全て(自分が転生して来た魂と逆転移して来た勇者の存在以外)の事情を話して、地下駐車場に納車し終えて中に入るとリビングで山村が声をかけて来た。


「せんせー、ありがとう・・・」


「ん? 礼を言われる程の事はしていないぞ?」


 さっさと自室に行こうとすると、「照れているだけだから〜、気にするにゃよー」と缶ビールを飲んでいた咲耶さや義姉ねえがウザ絡みをして来た。


「は、はぁ・・・」


 流石に苦笑いだな、山村。


「山村、廊下に出て手前にあるゲスト部屋がお前の部屋だ。 じゃ、おやすみ」


 マジで、疲れた。


 日曜日ぐらい、ダラダラと過ごしたかったが、叶わなかった。


 時刻は午後22時00分、明日に備えておやすみなさい。



 翌朝、月曜日。


 欠伸をしながらキッチンに行くとエプロン姿の山村が鼻歌を歌いながら料理していた。


「は・・・?」


 食卓にはすでに、食事を堪能している咲耶さや義姉ねえがいた。


 すると、目の前に山村が来て上目で見て「せ、先生の口に合うか、分からないよ?」と言って来た。


 いや・・・、反則だってば。


 静かに席に着くと、合掌してはしを右手に持ち白米がのった茶碗に左手を伸ばし、湯気の出る白米を口に含み頬張って歯と歯を噛み合わせて、喉に通した。


「う、う・・・」

「う?」


「う・・・、うんメェェェェェェ!!!!!!!!」


 家の炊飯器で炊いたとは言えないこの旨さ!そして軽く塩を振っているとも錯覚する程の、塩加減!


「実に、美味だ」


 涙を頬に音もなく流しながら、感動してしまった。


 その姿を見ていた山村は「驚きすぎだよ、せんせー」と微笑していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る