2,非常勤講師の始まり

 俺が住む光ヶ丘町は私鉄が縦横無尽に走り、国営鉄道や市営地下鉄が都会と結んでいる平均的な街だ。


 4月、俺は今。講堂で壇上に立ちマイクを前にしている。


「えーっと、先程。森山もりやま幸祐里さゆり理事長から、ご紹介ありました、高宮たかみやまもるです。現代社会と体育補佐を担当する非常勤講師です、これから1年間。よろしくお願いします」


 講堂のあちこちから聞こえてくる拍手を聞きながら元いた場所に戻ると、次々に教師や非常勤講師達の挨拶が始まった。


 俺は、人前で何かを話すことが好きか嫌いかと問われたら嫌いではない。


 そして、新入生達が講堂から出ていった後、職員室で改めて自己紹介が始まった。この時知ったが、この学校内で男性は俺だけだった。森山理事長に話を聞くと、「後々、採用数を増やす方針だけど、今は実験よ?」と明るく話してくれた。


 ちなみに、森山もりやま幸祐里さゆり理事長は今年26歳になったばかりだと面接の時に教えてくれた。容姿端麗で明るく話してくれる、まさにこの学校のアイドル的理事長だろう。


 午後17時45分、教師達が明日の予定を決めている中、俺は1人だけ日課になってしまった現代社会科目の総復習をこなしている。今は、内閣についてのページだ。


 正直、政治に興味はない。俺たち兵士は、上官に言われたが戦場で敵を倒すだけを考えたら良いだけだ。


「お疲れ様でしたー」


 そんな声が聞こえて来たので、俺も帰りの準備を始めた。しかし、どんなに遅くなっても、俺は困らない。だって、所持している大型二輪のハーレーなら15分程度で住んでいるマンションだから。


 翌朝、出勤したらハーレーの独特のエンジン音で驚いた登校中の女生徒達が教室や正門側から顔を出していた。


 ヘルメットを脱ぎサングラスをとると、ネクタイなどが入ったリュックを片手で持ち意気揚々と裏門から中に入った。すると、出迎えていたのは女性教師達がこっちを見て固まっていた。


「あ、おはようございまーす」


 何気なく挨拶すると会釈だけして、全員がその場からいなくなった。


 ハーレーに乗っているのは、趣味だ。趣味と職を一緒にするなと思っているのは多いかもしれない。しかし、これだけは言わせてくれ。


 趣味を失くした人は、殺人率が高くなるぞ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る