第4話 ヴァース
「Fake World…そんな話はいままで聞いたこともなかった」
Codeについての勉強は学校を通っていれば、誰しもが学ぶ内容だ。
しかし、人々の記憶が一つに集まり、作られた世界のことなど聞いたことすらない。
この世界に来る前の自分であれば、よくある作り話と笑い飛ばしていたが、現在自分の目の前に広がっている光景が真実であるため、議論の余地もない。
いつから存在していたのか、Codeの開発者はこのような事態を想定していたのか、様々な疑問があるが、特に気になることが1つある。
人の思い出が形となったものであれば、この世界に存在していた魔物はどう考えても異質の物と感じられる。現実には存在しないものであるからだ。
あれは何なのだろうか。確認してみる必要はあるだろう。
「人々の記憶が作った世界なのであれば、人の記憶とは程遠い存在の魔物みたいなアレはなんなの?」
翠は床に横たわっている魔物の死体に指をさして言った。
リーパーは少し悩んだような顔をしてから語り始めた。
「正直、私も完全には把握していないのよね。この世界のウィルスのような存在で、何のために存在しているかも不明。確実に言えることとしては、人に害をなすものであり、友好関係は築けないことぐらいかしらね。ちなみに、私たちはあの生物を、ヴァースと呼んでいるわ。」
リーパーは説明を続ける。
「出現方法についてもすでに分かっていて、ヴァースは主に2通りのパターンで出現するわ。一つは自然発生して生まれてくるパターンよ。人の憎しみや、恨み、怒りといった負の感情がヴァースという実体となって生まれてくるの。問題はもう一つのパターンで人の意志によって作られた場合よ。」
翠は困惑した。なぜ人があのような化け物を作る必要があるのか分からなかったからだ。
「人によって作られたヴァースは与えられた目的を達成するまでは、死ぬまで止まらないの。人間と違って裏切ったりサボったりはしないわけね。扱う側からするととても便利な存在だと思わない?殺しや盗みなんでも言うことを聞いてくれるのよ?」
「与えられ目的を…あっ!」
翠は気づいた。さっきまでのヴァースは人の手によって作られたものだと。
なら、父の部屋で何を探していたのだろうか。
探してみる必要がありそうだ。
「リーパー。あんたには父の部屋をあさっていたヴァースの目的の検討はついていたりするの?」
リーパーは首を振ってこう答えた。
「恐らく、あなたの父が残したCodeに関する資料だとは思うけど、何の内容かまでは見当つかないわ。」
父が何の資料を残したのか探ってみる価値はありそうだ。
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