第二幕 天命編

序章 月明の都

 

 私とルソンが城を出てから、4ヶ月が経ち、季節は春から夏に移り変わろうとしていた。

 リティス村で出会った少年、リクスも加わり、私達は天蘭王国てんらんおうこくの南に位置するみやこ月明げつめいを訪れていた。


「お腹空いたわね〜」

「そうですね〜、姫さま、歩いてる最中に何回か、ぐーってお腹鳴ってましたもんね」 

「ルソン、そういうことは気付いていても言わないでちょうだい。恥ずかしいでしょ」

「はは、すいませんね。つい言いたくなってしまいまして」 


 月明の都を訪れた私達は昼食をとるため、月明の都にある中華料理にいた。

 ルソンとセナの会話を向かい側の席に座り、目の前にある木造でできた四角い茶色のテーブルに頬杖をつきながら聞いていたリクスは呟く。


「セナとルソンって、本当、仲良いよね」

「そうかしら?」

「まあ、俺と姫さまは、小さい頃からの付き合いだからな。思ったことは結構はっきり言える関係性ではあると思っているぞ」

「そうね。お互い遠慮したり、気を使うようなことはないわね。小さい頃からずっとこんな感じよ」

 

 セナとルソンは主従関係であるが、幼なじみでもある。リクスはセナとルソンが幼なじみであることを知らなかったのかセナの言葉に少し驚く。


「へぇー、ルソンとセナは幼なじみだったんだ」

「ええ、」


 そんなセナ達の会話が終わるのと同時に、同じ店内にいるテーブル席の方に座る客の話しが聞こえてくる。


「ルク陛下が殺されたらしいぞ」

「ああ、そうみたいだな。聞いた話しによると、セナ姫様も行方知れずになっているらしいな」

「そうなのか、それは知らなかった」

「これから、どうするんだろうな。ルク陛下の弟も行方不明のまま見つかっていないし。王がいない状態では、国が危うくなるかもしれない……」


 男性二人のそんな会話を聞いたセナ達は顔を見合わせて、小声でひそひそと話し始める。


「ねえ、ルソン、今の話……」

「ああ、本当かどうかはわからないが」

「あの人達が言ってる話しが本当なら、やばいんじゃないの? だって、王位につける人、今、城に誰一人いない状態じゃん」

「そうね、」


 現国王であるルク王。彼はセナの本当の父親ではなく、ルク王の実弟であるソレザという男であることを知っていた。春祭りの日にシウォンから聞いた話しが本当なルク王の実弟が殺されたということになる。


 セナは座っていた席から立ち上がり、会話をする二人の男性客の元まで足を運び声を掛ける。

 

「あの、今の話って、本当ですか?」

「ちょっ、姫さん!?」


 セナの唐突の行動に驚いたルソンは小さな声で声をあげるが、ルソンの声はセナには届かなかった。

 そんなセナに声を掛けられた二人の男はセナの方を見て答える。


「え、? ああ、本当みたいだぞ。俺の身内に城で働いている者がいるんだが、昨日、ふみが届いてな。その事が書かれていた」


 茶髪の中年男性がそう言い終わると隣に座っていた黒髪の若い男は頷いてからセナを見て問い掛ける。


「お嬢ちゃんも興味あるか?」

「ええ、興味あるわ。良ければ詳しく話しを聞かせていただけないかしら?」

「いいぞ、」


 そんなセナ達の会話をルソンとリクスは聞きながら声にする。


「はぁ、ほんと、姫さまは行動力がありますね」


 ルソンはセナの行動力に関心しながらも「あまり目立つような行動はしてほしくないんだかなぁ……」などと呟いていた。

 そんなルソンを見てリクスは問い掛ける。


「ルソンは行かなくていいの?」

「いや、俺は、ここから聞いてるよ」

「ふーん、そっか。じゃあ、食べ終わったことだし。俺は行ってくるよ」


 リクスはルソンにそう告げてから、席を立ち上がりセナ達がいる方へと行ってしまう。


「え、おい、! はぁ、たっく、リクスまで……」


 ルソンはまたため息をつきセナとリクスの方を見ながら、二人が戻ってくるのを待つことにしたのであった。

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