第17話 結婚を前提に
「ふーん。そこまで人助けが好きなのね。ヒーローにでも憧れているのかな?」
「わ、悪いかよ」
俺は少し照れ臭そうに外方を向く。
「いえ。人それぞれですもの。笑ったりしないですよ。いいんじゃないですか。人助け。私もそう言う人が結婚相手なら嬉しいですよ」
「いや、だから結婚はしないってば」
「この私からファーストキスを奪っておいてよくそんな口が効けますのね」
「くっ。あくまでもファーストキスとして捉えるのか」
「当然。だって私の唇は安くありません。あなたが生涯稼ぐ労力では足りないくらいに」
「随分な言われようだな。だからと言って結婚を認めるわけにはいかない」
「はぁ、あなたも意思が硬いですね。なら、こう言う捉え方なら聞き入れるのではないですか。私との結婚は人助けってことにしない?」
「はぁ? 余計に意味が分からないぞ」
「つ・ま・り。私との結婚は人助け。これならあなたがしたい人助けに繋がる訳だからお互いにウィンウィンな関係になれるでしょ。私って頭良い」
上機嫌に言う九条鈴蘭に俺は頭を抱える。
「ウィンウィンな訳あるか!」
俺のツッコミとも言える否定に九条鈴蘭は涙ぐむ。
「え、え、え、うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんんんんんんんんん!」
幼い女の子が大泣きするように九条鈴蘭は気が狂ったように泣いた。
お嬢様の気品がまるでない。
まるで別人。ここまで感情的になれる人は今までに会ったことがない。
「お、落ち着いて。泣かないで」
「じゃああああぁぁぁ、泣き止む代わりに結婚して下さいいいいいいいいいいいいいぃぃぃっっっ! 私が将来養ってあげますからあああああああぁぁぁ」
泣き止むことを条件に結婚を突き付けるとはただでは起きないと言う訳か。
無茶苦茶過ぎる。
「分かった。じゃ、こうしよう。まずはお互いのことを知ってから考えようじゃないか。結婚まで行き着くのはその後だ。な?」
「それってつまり結婚を前提に付き合うって意味で捉えていいってこと?」
「ん? あぁ、そうなるのかな?」
「言っておきますけど、浮気は九条グループ全体を敵に回すって意味です。それを分かった上で付き合ってくれるんですよね?」
物凄い圧力に俺は動揺した。
それでも今のこの状況を言い包めるには彼女に従うほかなさそうである。
「わ、分かった。じゃ、付き合うか」
そう言った瞬間、九条鈴蘭は満面の笑みを浮かべた。
「うふふ。じゃ、結婚式場を予約しておかないとね」
「だから結婚はまだ先って言っているだろ」
「そうだ。私のことはすずちゃんって呼んでね。鈴蘭だからすずちゃん」
「すずちゃん。よ、よろしく」
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね」
こうして俺は九条鈴蘭と正式に付き合うことが決まってしまう。
俺の冤罪の原因が分かり、スッキリした反面、知らなかった方が良かったと思えることもまたあるわけで今後、九条グループと大きな関わりが増えたことは言うまでもなかった。
話はまとまり、俺は帰宅の時を迎える。
「もう少しこっちでゆっくりすればいいのに」
「そうしたいのは山々だけど、いつまでも仕事を休むわけにはいかないからね」
「次はいつ会える?」
「さぁ、その時に連絡するよ」
「地球の果てだろうと会いに行きますから」
「あ、うん。ありがとう。すずちゃん」
「きゃ。愛していますよ。コウくん」
「あぁ、うん」
俺に彼女が出来た実感がまだない。でも九条鈴蘭が俺の彼女になったことは代わりない。
「家までヘリで送りますのに」
「いや、公共交通機関で気長に帰るよ」
「そうですか。気をつけて下さいね。私も忙しい身ですから落ち着いたらすぐに飛んで行きますから。文字通りにね」
「うん。じゃ、ありがとう。行くね」
「気をつけて!」
九条鈴蘭ことすずちゃんに見送られて俺は家に帰ることになった。
住んでいる場所が遠距離なことからすぐに会える距離ではないのだが、九条グループの力を使えば遠距離でも大差ないのかもしれない。
「さて。帰るか」
俺は家に帰るため、駅に向かった。
こうして俺の冤罪騒動は無事解決したが、不安が余計に残った。
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★★★がほしー。
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