海で溺れていた美少女を人工呼吸で助けたらファーストキスを奪われたと求婚される。その後、人助けが趣味の俺は次々と美少女を助けた結果、結婚を求められて困っています。じゃ、助けるなよってそれは無理な話だ。

タキテル

第1話 人助けがしたい

俺、雜賀航輔さいがこうすけは英雄に憧れを抱く十九歳の若者だ。

昔からヒーローものが好きで戦隊モノや勇者モノなど幅広いジャンルのアニメに興味を持っていた。それは青年になった今でも変わらない。何年経とうと英雄というものは俺の中で憧れでもあり、なりたい存在でもあった。

そんな俺はライフセーバーとして高校を卒業と同時に就職した。

爽やか系の顔立ちに肌黒で筋肉質な俺にぴったりの仕事とも言える。

人助けをして誰かの役に立ちたい。常にそんなことを思っているのだが、それはいつも空回り。

自分の行動が役に立っているかどうかなんて実感がない日々を送っている。

と、言うのもこれまでの俺は善意で人助けをしたつもりでも相手からしてみれば迷惑な話だったことはざらにある。

そんな経験が続けば俺の行動は他人に迷惑をかけているだけなのではないかと疑うようにもなる。


「はぁ。かったりぃなぁ」


 俺は人助けとは無縁のゴミ拾いをしていた。


「はは。そう言うなよ。これも立派な仕事だ」


 俺はライフセーバーの先輩と共に海辺で散乱したゴミを袋に詰めている。


「でも、先輩。俺は人助けをしたくてライフセーバーになったんです。それなのにゴミ拾いって。こんなのあんまりじゃないですか」


「あのな。雑賀。そんな毎度毎度、助けを求められたら参っちまうよ。普段は海の秩序を守るためにこうしてお客さんが過ごしやすい環境を作ってやるのが俺らの仕事でもあるんだ」


「でも、先輩。人助けをしてこそライフセーバーでしょ。それなのにゴミ拾いって」


「人助けって。お前はそんなに人助けしたいのかよ」


「当たり前です。俺はヒーローになりたいんです」


「ヒーローってガキじゃないんだから。そんなに人助けがしたいなら警察官や消防士になった方がよかったんじゃないのか。なんでライフセーバーなんだよ」


「俺、昔から泳ぎは得意なんです。学生の時は水泳で全国まで行きました。自分の特技を活かすならライフセーバーかなって」


「へぇーそう。まぁ、別にいいんだけどさ。目の前の仕事にも意味があるんだから手を抜くなよ」


 先輩は興味なさそうにゴミを拾いながら言う。

 人助けと言うよりも業務の一つとしか思っていない。その温度差が先輩との間にあった。


「そう言えば先輩は今までに何人を助けたんですか?」


「そんなことを聞いてどうする?」


「いえ。参考にと思いまして」


「さぁ。十人くらいかな」


「先輩ってライフセーバーになって三年目ですよね。少なくないですか?」


「馬鹿野郎。そんな何百人も助けを求められる展開なんてそうそうあるわけじゃない。大体、お前は人助けに執着し過ぎなんだよ。今は目の前の仕事に集中しろ。お前みたいなペーペーは地道な努力から始めるものなんだよ」


 そう、俺は人助けをしたい反面、未だにそれが達成されていなかった。

 勿論、事件など訪れずに平和であることが一番なのだが、こう何もないとやりがいが阻害される。

 俺に出来ることは困っている人を助けると言うよりも誰もやりたがらないことを率先してやることしかない。

 それは昔から一緒だった。

 誰もやりたがらない係決めや誰かが立候補しなければ終わらない時間など、俺は進んでやっていたが、周囲からは都合がいいなど助けると言うより厄介払いのような仕打ちを受けていた。

 それでも喜んでくれる人がいたので割り切っていたが、心から感謝されたことは経験がなかった。

 そんなことから俺は人助けが出来る職種を選んだのに現状は何も変わっていない。


「雜賀。ゴミ拾いが終わったら次は分別作業だ。これはこれで大変だから真面目にやれよ」


「はい。頑張ります」


 そんな時だ。

 俺はふと、海に目を向けた。

 小型の船が目の前を通っていた。この辺は浅瀬なので珍しかった。

 だが、その前方に岩があった。船は一直線に向かう。


「やばい!」


 そう思った矢先である。

 船は岩に衝突してしまったのだ。

 ドカーンと鈍い音が響いて船から人が投げ出されてしまう。

「きゃー」と女性の悲鳴が聞こえてくると同時に船は横転する。

 一大事に俺は最善の対応に動く。


「先輩。本部に連絡を!」


「あ、あぁ。って、お前、どこに行く!」


「決まっているじゃないですか。助けに行くんです!」


「勝手な行動はやめろ。怒られるのは俺なんだぞ」


「先輩。後は頼みます」


「待て! 戻ってこい。雜賀!」


 俺は先輩の命令に従うことなく走り出す。

 沖に設置されていた水上バイクにエンジンを掛けて現場に向けて走り出した。

 現場との距離は約八百メートル。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッと。


 水しぶきをあげながら俺の気持ちは前のめりになっていたと思う。

 待っていろ。俺が必ず助けてやるからな。

 俺の目線の先には海に投げ出された人を捉えていた。

 こうして俺の初の人助けが始まろうとしていた。



■■■■■

新作始めました。

是非とも★★★をよろしくお願いします。

今後の励みに繋がります。

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