ホームで見た、君の横顔。
TEAR-KUN
第1話 出会い
僕は中村優斗、どこにでもいる普通の高校二年生である。いや、普通というと少し語弊があるかもしれない。僕の通う高校は都立小山田高等学校、全国最難関の高校である。まあつまるところ僕は俗に言う『天才』なのである。と、自慢げに言っているが、決して僕は人格者であるとは言えない。陰キャなのだ。だから、友達は少ない。というか、いない。学校でも放課後でも、人と一切接することがない。毎日学校では、ぼっち飯を食って、悲しく暮らしているのである。
とある初夏の日のことである。授業が終わると僕は部活もせずにそそくさと最寄り駅である小山田駅へ向かっていた。すると前に、見慣れない制服を着た女の子が歩いていた。どこの学校なのか気になったがその時はそれまでだった。
そして、事件は起きた。
ぶらぶらとしばらく歩き、ホームで電車を待っていた。その時、僕の目は、ホームの一点に釘付けになった。怪しい男が、女の子と近すぎるのだ。親子という雰囲気でもない。異常だと思った僕は、
「何してるんですか?」
と怪しい男に話しかけた。すると、男は不思議そうな顔をしていった。
「どうかしましたか?」
「いや、だから、何してるんですかって。その女の子から離れてください。」
男は更にきょとんとして言った。
「いや、何の話です?ここには何もありませんが?」
そこまで混雑しているわけではないホームにいるのだ。勘違いするはずがない。僕は激しい憤りを感じた。
「ふざけないでください」
といった。いや、言おうとした。言い終わる前に、女の子はいなくなってしまっていた。
僕はあっけにとられた。数秒前まではいたのだ。すぐそこに。走って逃げれば気づくはず。僕はそこに立ち尽くし、思考停止してしまった。そんな僕を尻目に、男は僕を汚物を見ているような目で見ながら、やってきた電車に乗っていった。
それが、僕とその子の物語の始まりだった。
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