241.合格祝いと黒い影

 すべてが終わり、水島顧問から合格の一言を頂いた三軍は、肩を抱き合い涙を流して喜んでいる。


「「「「地獄の日々が終わった~!」」」」


「明日は寝るぞ~!」


 何が地獄の日々だ。それに付き合わされた俺の身になれ! とはいえ、合格は合格。


「よし、合格祝いだ! 今日は呑むぞ!」


「「「「「おぉー!」」」」」


 ささっと、撤収を済ませ。事務所に急ぎ戻る。


 今日の参加者は主賓の三軍、それに二軍、水島顧問、遠野さん、赤星さん、俺、瑞葵、麗華だ。星野さんと清和せいわさんは不参加となった。


 三軍は餃子が食べたいとのことなので、餃子の居酒屋をチョイス。ってか、餃子の居酒屋ってあるんだな。


 星野さんがかりんをおいていけ~とうるさいので預けておく。後で迎えにくるので、連れて帰らないように念を押しておく。


 店に着き、取りあえず未成年以外はビール。


「それでは三軍の諸君、合格おめでとう。来週からはお前たちだけで行うことになる。気を抜けば、死ぬから気をつけろ、以上だ。乾杯!」


 みんなジョッキを掲げて乾杯する。近くにいたお客さんやお店の人も、俺の合格という言葉を聞いておめでとうと一緒に乾杯で祝ってくれる。


 いろいろな餃子に舌鼓を打っていると


「アニキ、その三軍っての勘弁してくれないっすか?」


 と隼人が言ってきた。いや、別に好きにすればいいんじゃね?


「三番目に作ったチームだから便宜的に三軍と呼んでるだけで他意はない。嫌なら自分たちでチームの名前を付ければいい」


「えぇー、まじっすか!? アニキ!」


「じゃあ、我々のチームの名前も決めないとな。恢斗」


 なぜ健志が驚く? 言っていなかったっけ? 名前は瑞葵と好きに決めてくれ、麗華。


「かりんと愉快な……」


「却下な」


「どうしてですの!」


 やっぱり、麗華が決めてくれ……。


 この餃子唐揚げって、前に食べたことのあるホワ〇ト餃子に似ているな。油淋餃子ってのも旨い。


 それと人生初ホッピー。なんだこれ? 中は焼酎か? これを入れろと?


 か、かってぇー! 


 これ、最初は濃いけど、どんどん薄くなっていくんじゃね? えっ? 中身だけお替りするの? 面倒くせぇ……。ビールでいいや。


 ほうほう、馬刺しもあるのか。馬刺しは冬が美味いといわれるが、まあ冷凍だから気にしなくていいか。種類がなかなか多いな。一通り注文して食べ比べしてみよう。


 ヒレのたたきが個人的には肉らしくて好きだが、霜降りが美味いとの圧倒的多数で否決された……。


 〆でマグロのお寿司を食べようかと思ったが、明日は麗華の祖父に夕食でお寿司をご馳走になる約束があるから我慢した。代わりにラーメンだな。


「アニキ、それじゃあ先に行っときます」


 二次会突入することになった、全員な。


 クレシェンテの事務所に戻ると、そろそろ帰社時間だというのに星野さんも清和せいわさんもかりんにデレデレ。仕事せんでえぇの?


「風速くん。やっぱり、この子ちょうだい!」


「嫌です。帰るぞ、かりん」


「きゅ~」


「か、かりんちゃん……」


 哀愁を漂わせよなよなと崩れ落ち、こちらを悲しみの目で見ながらハンカチを口で引っ張る星野さん。無視だな。


 黄金街まで歩いていると、チリチリと感じる嫌な気配を感じる。誰かに見られている? 気配察知スキルが発動した? 危機察知は発動していない。今は戦闘服じゃなく普段着だ、目立つ格好ではない。


 ホルダーのマップを確認すると俺を中心にホルダーが三人展開している。それも全員黒星、高レベルのホルダーだ。何者だ?


 接触してくる気配はないようだ。何が目的だ? 恨まれるようなことなど……なくはないな。一番は大陸のホルダーか? どこからか情報が漏れたか? 政治家関係が怪しいな。一応、沢木管理官に問い合わせをしてみるか。面倒だな。


「いらっしゃい! 風速くん。待ってたわ!」


 どうやら、店は今回も貸し切りのようだ。ひろみママにかりんを渡す。


「きゃー! 可愛い~♡」


 お店のお姉さんたちのかりん抱っこ合戦が始まる。


「全員、マップを開け」


 瑞葵と麗華、二軍、三軍連中も怪訝な顔をする。


「開いたか?」


 全員が頷く。


「黒い星があるのがわかるな?」


 また、全員が頷く。


「今、一か所に固まっているから一人に見えるが三人いる。どうやら、俺を監視していたようだ。おそらくだが、お前たちの件が濃厚だと思っている」


 全員の表情が青褪める。


「狙いは間違いなく俺だから安心しろ。だが、もし接触があったら逃げろ。警察署に飛び込んで、ホルダー管理対策室に連絡するのもありだ。わかったな」


 また、全員が頷く。


「例の大陸のホルダーか? 恢斗」


「だろうな。明日、沢木管理官に問い合わせる。早々と情報を漏らした馬鹿がいるようだ」


「大丈夫ですの? お父様に話を上げるべきではなくて?」


「今はいい。ご当主に動いてもらうのは最終手段だ」


 相手がまだ確定できない以上、手の打ちようがない。


「どうするつもりだい? 恢斗」


「このままだな。向こうが手を出してくれば報復はする。まあ、情報を漏らした奴がわかれば手厚く対処はしたいところだ」


「ア、アニキの暗黒面が駄々洩れ……ガクブル」


 うるさいぞ、葵。


 なんだ、その暗黒面ってのは?


 やられたら十倍返しは当然の権利だろう?








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