56.交渉開始
「ごほん。それでだが……」
と瑞葵父が言ったところで、お手伝いさん二人がお茶とお菓子を運んできた。俺がお土産に持ってきた金鍔が皿に載っている。
お手伝いさんがお茶を淹れ配り終わったところで、
「呼ぶまでこの部屋近くには人を寄せないようにしてくれ」
お手伝いさん二人は頭を下げ出ていった。
自分で買ってきた金鍔だが美味いな。
にゃ~んと声が聞こえた横を見れば、瑞葵がどらちゃんに金鍔の欠片を食べさせていた。
お菓子も食べ終わったところで話を切り出す。
「ご当主はホルダーについてどこまでご存じでしょうか?」
「そうだな。調べてみるまではそのような組織がある程度の認識だった」
表の国民が知らないような有象無象な裏の組織なんて腐るほどあるんだろうな。そんなところに投げられた瑞葵の一石。まさか、自分の娘が裏の世界に足を踏み入れるとは思ってもいなかっただろう。
そして、ポーションなんていう御伽噺に出てくるようなものを持って力を貸して欲しいときたから、持てる伝手を最大限に使い調べたわけだ。
そして始まる俺たちの知らなかったホルダー秘話。
日本の神々のように大陸から渡ってきた悪神ではないかといわれており、日本に一等呪位がいるのかはわかっていない。なので、大陸からは二等呪位が渡ってきたのではないかと言われている。二等呪位以下はいることは確定している。
ちなみに、有名な大黒様なんかも外から来た神様の一神だ。天津神、国津神以外はほとんどがそんな感じらしい。そこに紛れ込んだ悪神と思われているみたいだな。
ホルダーという呼び名はつい最近。その前はそれこそ修験者、優婆塞、防人、検非違使、陰陽師、忍びなどいろいろな呼び名で呼ばれていたらしい。
ちょっとそこで瑞葵父からの小話。戦国時代から江戸時代の世にいう傾奇者もすべてではないがホルダーだったらしい。
言われてなんとなく納得。
そして、気になっていたことが一つ判明。
設定に言語選択があったのはやはりこういうことだったんだな。となると疑問なのがホルダーランクは日本限定なのか? ホルダーが世界規模だとあの人数だと無理がある。
やはり、誰かがランクを管理していると考えるべきだろう。そこら辺を瑞葵父に聞いてみたがわからないそうだ。
そして、最後に聞かせてくれたのが
静岡県は富士山、島根県は出雲大社、宮城県は多賀城。この三つのどこかに二等呪位がいて、残りに三等呪位がいる異界、通称ダンジョンがある。本命は出雲らしい。
その三県と東京に組織が集中している。東京関係ねぇじゃんと思ったが東京はたんに人口が多いからだそうだ。
「さて、君は私に何を求める?」
瑞葵から聞いているはずなのに、あえて俺から聞くか。
「今は瑞葵さんと二人だけですが、今後人を増やし組織として活動していきたいと思っています。ですが新興勢力というのは必ず横槍を入れられるもの。現に今現在、国の組織と揉めています」
「その横槍から庇護しろと?」
「政財界に強いお力を持つご当主であれば、それほど難しいことではないかと」
瑞葵のほうを見ると俺を見て首を振っている。自分で説得しろってことか。
「瑞葵さんに以前持たせたポーションは見ていただけたでしょうか?」
「見せてもらった」
「その効果については?」
「知り合いの製薬会社の研究所に回させてもらっている」
ということは、まだ実際にその効果を見たわけではないのだな。ならば、仕方がない。またやるか。
ホルダーから初級回復薬を取り出し座卓に置く。そういえば使えるナイフがないな。霊子ナイフには呪いの効果を付けたので自分に使うわけにはいかない。
瑞葵を見る。首を振りながら、はぁ~仕方ないわねと肩をすくめ席を立つ。瑞葵父は何も言葉を発せず、俺をジッと見ている。
すぐに瑞葵がナイフとタオルを持って現れる。タオルを持って来るなんて気が利くな。
スーツの上着を脱ぎワイシャツの左袖をまくる。タオルは左腕の下に敷いた。
正直、痛いのは嫌なんだけどなぁ。
ここで、やめるわけにはいかないよねぇ。
はぁ~、やりますか。
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