43.依頼と条件
柿崎は首を横に振る。
「七等呪位を倒していることは問題ない。逆に本音では感謝しているくらいだろうぜ」
「じゃあ、なんだよ?」
「あまりにも七等呪位を倒すペースが速い。そして、それをやっているのがアウトサイダーのホルダーだってことだ」
要するに、面目を潰されたってことか。
「土屋陰陽会は躍起になってお前を探しているぜ」
「何のために?」
「決まっているだろう。身内に引き入れるためだよ」
「いいのか? 俺が土屋陰陽会に入ったら次の当主は間違いなく俺になるぞ?」
「言っとくが当主候補の田村は十人いる候補の一番下だからな。現当主もランク200番台に入る強者だ。あんまり舐めるなよ」
200番台ねぇ。二年もあればそこまで俺も行ける自信はある。なにせ、ねらうはトップだからな。
「土屋陰陽会だけじゃないぞ。ほかの組織もお前を囲い込みたいと調べ回っている。まあ、うちもできればお前を囲い込みたい気持ちはあるけどな」
「興味ないな」
「まあそう言うと思ってうちは囲い込みじゃなく、協力体制を築きたいらしく、今回の依頼を出したわけだ」
なるほど、そうきたか。国の機関が一歩引いてきたことは、こっちの望む状況だな。
「それでどんな依頼だ」
「都内に至急倒さないといけない七等呪位が二体いる。そのうちの一体を倒すほうに力を貸して欲しい」
「なんで至急なんだ?」
「そこからか……」
しょうがないだろう。俺がホルダーになったのは最近だぞ。情報なんて皆無だ。
ということで、柿崎ホルダー講座が始まった。
実は上位の
一等呪位 2000年で一体の二等呪位を生み出す
二等呪位 1000年で二体の三等呪位を生み出す
三等呪位 500年で三体の四等呪位を生み出す
四等呪位 100年で十体の五等呪位を生み出す
五等呪位 10年で五十体の六等呪位を生み出す
六等呪位 5年で百体の七等呪位を生み出す
七等呪位 1年で二百体の八等呪位を生み出す
八等呪位以下 数量不明
確定しているのは四等呪位以下。三等呪位以上はそういう記録が残っているらしいが事実かどうかは不明。鼠算式みたいだな。
しかし、こんな法則があったとは……。七等呪位には一年しか猶予がないんだな。八等呪位二百体って、あんなのがうじゃうじゃいるってことかよ。
ちなみに、三等呪位まではホルダーが倒した記録が残っているみたいだ。しかし、近代では四等呪位までしか倒せていないらしい。その理由を聞いたが話せないのか誤魔化された。
それと、通常のホルダーが戦えるのは五等呪位まで。四等呪位以上はホルダーランク500以上クラスの者が常時見張っていて、誰も近寄れないようになっているらしい。柿崎クラスだとその場所すら教えてもらえないそうだ。そのくらい危険ってことだろう。
「それで、依頼なんだから報酬は出るんだろうな」
「もちろん出す。一人頭五十万だ」
「ちなみに何人でやるんだ?」
「もちろん六人PTでだ」
ということは、七等呪位一体に付き三百万か。
「条件がある」
「なんだ?」
「二体いるうち一体は俺たちだけで狩る。よそ者はいらない」
「本気か? 七等呪位だぞ?」
七等呪位を狩るのに六人もいらねぇよ! それに下手にレベルの高い奴が来るとハイランクキラーの称号がもらえなくなる恐れがある。俺と瑞葵だけで狩るのがベストだ。
「この近辺の七等呪位を狩っているのは誰だと思っている?」
「くっ……いいだろう。だが、監視は付けるぞ。確実に倒したかの確認が必要だ」
次の日に確認しに行けばいいんじゃねぇ? と思ったが、
正直、気に食わないが今後協力していくうえで、こちらも妥協しないといけない場面だろう。
「もう一つ、今後のことは別として、今回は金はいらないから情報をくれ」
「情報?」
「機密情報をくれなんて言わない。ホルダーとしての常識、知っておくべき情報が欲しい。新人ホルダー用のマニュアルとかあるんだろ?」
国がホルダーとしての組織を作っている以上、そういうマニュアルは作っているはずだ。まさか、昔の職人みたいに、見て覚えろなんてことはないはずだ。
「なるほどな。アウトサイダーだとそうなるか。わかった、聞いてみる。しかし、本当に三百万はいらないんだな?」
「いらないわけじゃない。金以上にホルダーとしての情報が欲しいだけだ」
「じゃあ、組織に入れよ」
「それが嫌だから、こうして条件を出してるんだよ」
それにしても瑞葵さん、話し聞いてます?
ずっとスマホを見てニヤニヤしてますが?
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