40.スキル習得訓練

 オロオロしている炎樹えんじゅが俺を見てくる。


 なぜ、俺を見てくる? 敵の俺に助言を求めるのか?


 仕方がない。炎樹えんじゅに瑞葵を殴れとゼスチャー。それでもオロオロとして目を泳がせる炎樹えんじゅに、再度殴れと強い姿勢で殴れと指示。構わずやれ!


 やっと覚悟を決めた炎樹えんじゅが瑞葵に燃える枝の腕で払い攻撃。


「きゃー!」


 普段の瑞葵に似つかわしくない可愛らしい悲鳴を上げ、吹き飛ばされる。


 だから、なんで攻撃した炎樹えんじゅがオロオロしてるんだよ!


 吹き飛ばされ転がっていった瑞葵が立ち上がり、可愛らしく首を傾けている。


「い、痛くない?」


「すぐにアンクーシャを使え」


 瑞葵がハッとしたあとすぐにアンクーシャを使う。


「BPはどのくらい減っていた?」


「250くらい減っていたわ!」


 瑞葵のBPは370くらいあったはずなので意外と余裕だな。


「よし、あと三回繰り返せ!」


「他人事だと思って……。やればいいんでしょう! やれば! いいわ、やるわよ!」


 そう言って、また炎樹えんじゅの前までずんずんと向かって行く。


「さっさと殴りなさいよ!」


 また、ビクッとしてオロオロと俺を見る炎樹えんじゅ。だから、なぜ俺を見る?


 構わず殴れ! 殴り飛ばすんだ! 炎樹えんじゅ。お嬢様に世間の厳しさを教えてやれ! 庶民はみな苦労しているんだぞってな!


 オロオロ、オドオドしながらも瑞葵を殴る炎樹えんじゅ


 それをその後三回繰り返す。そしてなぜかハラハラと泣きそな表情の炎樹えんじゅがいる。


「終わったわよ! これでいいんでしょう!」


「選手交代だ。後は適当に残ったTPで自分のスキル使え」


 さて今度は俺が相手だ。こいつ炎樹えんじゅというだけあって物理+炎での攻撃が主体のようだ。ならば俺もいろいろなことをして、スキル習得の経験を積んおきたい。


 両手の武器をホルダーにしまい、炎樹えんじゅの前に立つ。


 今まで、泣きそうな表情だった炎樹えんじゅが嫌らしい笑いを浮かべる。


 相手によって態度を変えるってのは、どうかと思うぞ?


 そんなニヤけた表情の炎樹えんじゅの顔を殴る、そして蹴る。炎樹えんじゅも燃える腕と根で出来た足で俺を攻撃してくる。


 壮絶な殴り合いの始まりだ。


 瑞葵はBPが250くらい減ったといっていたが、俺の場合は40前後しか減っていない。ステータスと防具の差だろう。


 BPが半分を切ったところで一旦離れ、プチBP回復を二回使用。BPが500回復した。


 炎樹えんじゅも緑の光に包まれている。回復か? 俺を見てニヤニヤしてやがる。ムカつく奴だな。


 じゃあ、第二ラウンドの開始だ。


 また殴り合いを始め、今度は殴りながらプチサンダーを織り交ぜていくが、元が木のせいか雷はあまり効いていないようだ。


 そんな俺に対して炎樹えんじゅは殴り合いながら、口から火を吐いてくる。火炎放射かよ。ガリガリとBPが削られていく。


 やはり七等呪位、多彩な技を持っている。


 BPが減る度に、蹴り飛ばし間を開けてBP回復を繰り返す。


 俺がBPを回復している間に瑞葵がスキルで炎樹えんじゅを阻害するというルーティンが出来上がっている。とはいっても、俺のTPも残り200を切った。


 そろそろ、決着を付けようか。加速!


 武器を両手に持ち水流槍から水球を連射。相手は炎の化生モンスター、弱点とまではいかずとも嫌がる姿勢を見せている。


 その隙に霊子ナイフで枝をすべて斬り落とし丸坊主に。唖然とした表情になる炎樹えんじゅ。こいつ、表情豊かだよな。


 それはさておき、炎樹えんじゅの口に水流槍を突き刺し、水球を放つ。こうしてもう何もできなくなった炎樹えんじゅを瑞葵と死草原狼グラスウルフ・UD骸骨スケルトンを呼び寄せボコらせる。


『レベルが12になりました』


『レベルアップに伴いSP《ステータスポイント》を得ました各項目に振ってください』


『アイテムをドロップしました。ホルダーに収納します』


『ハイランクキラー達成により比率が加算されました』


『小エリアボス討伐達成ボーナスによりホルダーランクが追加上昇しました』


『小エリアボス討伐達成により特殊アイテムを獲得しました。ホルダーに収納します』


使役化生モンスターのレベルが上がりました』


「私たちって正義のヒーローなのよね?」


「たぶんな」


 瑞葵の言いたいことはわかる。傍から見ると化生モンスターをいじめているように見えるだろうからな。


化生モンスターに情けは無用。あいつらは俺たちが強くなるための糧なのだから」


「格好良く決めたつもりなのかもしれないけど、どう見ても私たち悪役ヒールにしか見えないわよ」


 それを言っちゃあ、おしめぇよ!








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