21.天の采配か?

「リクエスト、ホルダーランクバトル」


「なっ!?」


『ホルダー3523がランク戦強制受理となりました。仮想バトルモードに移行します』


 なんだこいつ二回断ってたんだな。気の強そうな顔して、意外と腑抜けか? まあ、俺にとってはラッキーだったけどな。


 仮想空間に移ると、


「何しやがんだ、この野郎!」


 田村が食って掛かってくる。俺に文句を言われてもなぁ。因果応報だろう? 日頃の行いが悪いせいだぞ。


「年上に対する態度じゃないからな、教育的指導をしてやろうと思ってな。やってみたら強制受理になった。お前腑抜けか?」


「はっ、馬鹿じゃねぇの? ホルダーは強さがすべて。十等呪位と一人で戦うことを許されたエリートの俺が、なんで格下とランクバトルするんだよ!」


 十等呪位と一人で戦うことを許された? あんなザコ相手に複数人で戦っての? マジ!? ありえねぇ……。


「御託はいい。相手してもらおうか」


「けっ、俺とお前じゃ、すべてにおいて差があるんだよ! ボコボコにしてやんよ! カス野郎!」


 十等呪位と一人で戦うことを許されるお前がエリートなら、七等呪位と一人で戦っている俺は……神か!


「はいはい、残念ながらそのエリート様は、今からそのカス野郎カミにボコボコにされる運命なんだよねぇ」


「うるせぇ! 消えてなくなれ!」


 おっ、火の玉が飛んできた。 消えてなくなるほどの威力はなさそうだけどな。


 水流槍を向け火の玉に水球を放つ。双方がぶつかり合い相殺。いや、俺のほうが威力的に上だ。威力はなくなっているが、田村は水球の水を全身に浴びて、ずぶ慣れになっている。


「なにっ!? く、くそう!」


 驚くほどか? 火の玉は野球ボールくらいの大きさ、それに対して俺の水球はバレーボールくらいの大きさ、たかが時速百キロくらいで飛んでくる火の玉に水球をぶつけるなんて簡単なことだ。


「ちくしょう! なら、これだ!」


 今度は田村が数枚の札をばら撒くと、その札たちが俺に向かって飛んできた。おぉー、不思議現象。


 しかしだ、田村はいちいち声を出さないと攻撃できないらしい。気合が入るから気持ちはわからないでもないが、今から攻撃しますよって教えているようなものだ。


 飛んできた札を水流槍で払ってほとんどを叩き落したが、一枚だけ水流槍に張り付いた。


 田村がニヤリと笑い、


「もらった!」


 などとのたまい、また火の玉を放ってくる。


 なにがもらったんだ? 学習してないなと思いながら水流槍から水球を放とうとしたが出ない!? 


 さっきの札か! ちっ、やってくれる。油断したわ!


 とっさに霊子ナイフで風切りを出す。すんでの所で迎撃に成功。十等呪位を何度も当てないと倒せない火の玉に当ったところでたいしたダメージは受けないと思うが、こいつにやられたと思うのが面白くない。


「こ、こいつまた!?」


 しかし、まさか水流槍の水球を封じられるとは、正直驚いた。あれはスキルなのか? それとも確立された技術なのか? 札を飛ばして攻撃とかって、なんか陰陽師っぽくって……お、陰陽師なのか!?


 おっ? おぉー、水流槍の札が急に燃え上がった。派手だな。この封印、時間に制限があるのか?


「嘘だろう! 封印が解けやがった!」


 ありゃ、違うみたいだな。


「チッ、金持ちの坊ちゃんかよ! いい武器揃えてやがる」


 金持ちじゃねぇし。正直、こんなザコに、いい武器のせいにされるのも癪に障る。


 いいだろう。次で決めようじゃないか。武器の性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる。あれ? 前と逆のこと言ってねぇ? まあ、いいか。


 水流槍と霊子ナイフはホルダーにしまった。こんな奴、無手で十分。


「なんだ? やっと実力差に気づいたか?」


 なぜ、そういう考えに至るのか疑問だが、こいつには何を言っても無駄だろうな。


 ダッシュで間を詰めると木刀で攻撃してきた。避けるまでもないが、邪魔なので手で払う。ビリッと払った手が痺れる。木刀の能力か? まあいい、たいしたダメージはない。驚いた顔の田村の顔面を殴りつける。


「ぶっへらぁっ……」


「オラオラオラオラ!!!」


 スタープ〇チナ並みに殴りつければ、奴は光になって消えていった。


『YOU WIN!』


『ホルダーランクが上がりました』


『ホルダーにアイテムを送りました』


『130000ポイントが加算されます』


 田村が小妖精鬼ゴブリンを倒した場所に戻る。本当に変な感じだな、これ。


「さ、さんびゃくよんじゅう……下がってるぅ」


 田村がorz状態。


 俺はちょうどランクが百上がってるな。ん? ってことは逆転したんじゃね? 二十だけだけど。


 これはあれか? 俺にあの言葉を言い返せとの天からの采配か?


「なんだ、格下かよ。カス野郎」


 ふふふっ。言ってやったぜ!


「ち、ちくしょう! 覚えてやがれぁ~」


 典型的な三下の捨て台詞頂きました! って逃げて行ったな……。聞きたいことあったのに。


 そういえば、あのぬめっとした感じがなくなった。バトルフィールドの効果が切れたのだろう。あのぬめっとさと嫌な感じでは、人が近寄らなくなるのもわかるな。経験しないとわからないものだな。今後は俺も使っていこう。


 しかし、ランキングバトルはおいしいな。化生モンスターを倒すより簡単にランキングが上がる。今後、ランクの格上を見つけ次第、ランクバトルを挑むべきだろう。デメリットがあまりないからな。


 さて、今回はどんなアイテムがもらえたかな? 火魔法のオーブ(1/50)と中級BPポーションがホルダーの中に増えている。中級BPポーションはデフォルトか? 火魔法のオーブ(1/50)はレアアイテムっぽい。


 でも、五十も集めないと意味がない。長い道のりだ。





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