11.加速スキル

 そういえば、九等呪位ではでなかったが、八等呪位と七等呪位でハイランクキラーという称号みたいなのが出た。比率がどうとかとも言っていたな。このプチ鑑定で見れないか?


 ハイランクキラー BP・TPの回復速度が1.2倍。所得経験値1.2倍 アイテムドロップ率1.2倍


 出たな。なるほど、なるほど、これはいいものだ。


 格上を倒すと比率が上がるみたいだから、ハイランクキラーを手に入れる毎に0.1UPするようだ。塵も積もれば山となる。


 となると、狙い目は八等呪位か?


 だが、今の自分はレベルが2上がっている。九等呪位で物足りなさを感じる、八等呪位でもスキルを使えば余裕っぽい。そんな八等呪位が格上とみなされるだろうか?


 まあいい、試しに探して戦ってみよう。


 化生モンスターは人が少ない場所にいるようだから、裏通りや再開発しているような場所を中心に探してみる。普段なら絶対に行かないような場所に行くのでやや緊張する。そんなところにいる連中は、どう見ても堅気に見えない人や、ヤンキー連中。いや、俺も周りから見れば十分に不審者に見えるだろう。


 そんな所を歩いていると、


『500m圏内に敵性化生を確認』


 きた!


 レーダーのマーカーは赤紫。八等呪位の可能性が高い。マーカーを頼りに化生モンスターのいる場所に急ぐ。


 川沿いの休工になっている工事現場だ。


 蜥蜴男リザードマン・ランサー 八等呪位。槍技能に特化したリザードマンの上位種。水魔法を使用し、水系の攻撃に耐性を持つ。水中での戦闘も可能。


 ビンゴ!


 二足歩行の青色のトカゲだな。艶やかな鱗に覆われ、槍と鎧を装備している。蜥蜴男リザードマンの近くには数人のヤンキーが倒れている。


 生気を吸われたのか? 死んでないよな? まあ、死んでいようが生きていようがどうでもいいけど、第一発見者になるのは嫌だな。


 倒れているヤンキー以外、周りには人影がない。蜥蜴男リザードマンはキョロキョロと周りを気にしたそぶりを見せている。何を気にしているのかわからないが、今がチャンスだろう。


 ホルダー内のポーションを確認。もしもの時の命綱だ。すぐに使えるように、一つはシザーケースのほうに移しておく。


 霊子ナイフを取り出し、並列思考、加速を使用。


 こちらに気づいていない蜥蜴男リザードマンに先制攻撃といきますか。


 武器合成され強化された霊子ナイフの威力を見よ!


 風切り!


 ナイフを蜥蜴男リザードマンに向け振り下ろす。と同時に蜥蜴男リザードマンに向け走り出す。


 蜥蜴男リザードマンが風切りに気づいたのか体を反らすが、右目の辺りを掠ったようで青い血が流れる。


 ちっ、欲張りすぎたか。顔を狙わず体を狙えばよかった。蜥蜴男リザードマンが避けるとは思わなかった。野生の勘か? 一撃で決められれば格好いいなぁなって思ったのが悪かったか?


 まあ、いい。次で決めるなんて思ったが、蜥蜴男リザードマンは目を負傷したにも関わらず、俺が接近して来る方向に槍を振るってくる。見えているわけではないようだが、気配を感じてはいるようだ。


 やはり、九等呪位と八等呪位では実力に雲泥の差があるようだ。そして俺は気づかされる。八等呪位を侮っていたことに。


 蜥蜴男リザードマンの持つ槍は闇騎士ダークナイトの持っていたサーベルの長さの三倍はある。そんな槍を振り回されたら近寄れない。体力切れを待つにしても、こっちの加速が切れる可能性がある。それ以前に、体力切れになるのかも怪しい。


 なんとか懐に潜り込もうとフェイントなどを交え動き回っていると、蜥蜴男リザードマンが槍の石突を地面に突きつけ何かを口ずさむ。


 瞬間、蜥蜴男リザードマンを中心に霧が噴き出す。最初は意味がわからなかった。だけど、さっきまでより俺のいる場所を正確に突いてくる、槍の攻撃で気がついた。


 俺が動くと霧も動く。俺がどんなに加速で早くなっても、霧の動きで先読みして攻撃しているのだと。


 戦い慣れしている。


 加速に対する素早い対処方法を確立する経験。そして、俺の動きを先読みするその技量。少し離れると水魔法なのかいくつもの水球が俺を襲い、俺の行き先を妨害するだけでなく自分の有利な場所に誘導するその戦闘センス。


 敵ながら称賛に値する。そう、侮っていた。そして、舐めていた。


 加速スキル凄い。それは確かだ。だが、消えたように見えるが、実際に消えたわけじゃない。こんな風に対処されることもあるのだ。過信は禁物。絶対はないということだな。


 ならばどうする? 俺の加速はまさしくチート、それは間違いない。経験、技量、センスで対抗されるというなら、その上をゆくまで!


 追いつかれるなら更に速く! 先読みされるならその先にもっと速く! 誰にも追従されることなくずっとずっと速く! 


 それが、加速の神髄!


 俺のナイフは蜥蜴男リザードマンの首を捉えていた。







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