12.経験値限定効率厨

『アイテムをドロップしました。ホルダーに収納します』


 レベルアップもハイランクキラーもなかった……。蜥蜴男リザードマン,

 強かったよなぁ……。白猿の時は初回限定ボーナスだったのだろうか? 


 こうなると七等呪位を狙うしかないようだ。正直、キツイなぁ。八等呪位と七等呪位では実力が違いすぎる。あの闇騎士ダークナイト級を相手にすると思うと腰が引ける。


 かといって、ハイランクキラーを諦めるのも、ゲーマーとしてはどうかと……。


 優しくねぇなぁ。


 なんて考えていると、倒れていたヤンキーたちがから呻き声が聞こえる。目を覚ましたようだ。死んでなかったんだな。九死に一生を得たな、お前たち。


 気づかれる前にこの場を去ろう。あばよ。もう会うこともないだろう。一度も顔をわせてないけど。


 加速を使ってこの場を去った。


 表通りの公園でベンチに座って、自販機から買ったジュースを飲む。ぷはぁー、疲れた体には炭酸が効くねぇ。


 蜥蜴男リザードマンの鱗      280,000P

 蜥蜴男リザードマンのカード(1/20)  30,000P

 水流槍        350,000P

 水魔法のオーブ(1/50)  600,000P

 八等呪石        10,000P


 討伐ポイントは4,500Pだった。4,500円かぁ。割に合わないな。金策に関してはわらしべ長者作戦を主でいくしかないようだ。八等呪位以下ではハイランクキラーが得られないこともわかったから、気合を入れ七等呪位を倒すしかない。


 それしても、七等呪位はどこにいるんだ? 出てこいや!


 その後も探し回るが見つからない。十等呪位と九等呪位は何体か見つけたが、倒す意味がないので無視。誰かが襲われているならまだしも、ただうろついている化生モンスターを倒す気はない。面倒だ。


 俺は正義のヒーローごっこをやってるわけではない。ゲームをしているのだ。そうゲーム、俺は経験値限定効率厨なのだ! アイテム集めやクエストなどは後でいい。


 だが、時間だけが過ぎていく。スマホを見ればもうすぐ十八時。陽も暮れてきた帰ろう。


『500m圏内に敵性化生を確認』


 なぬ? 動いていないのに反応が現れた。どういうことだ? 場所云々ではなく時間か? 十八時が境目なのか?


 レーダーの示す場所に急ぐ。マーカーは紫だ。


 着いた場所は市が管理する運動公園。十七時からが時間外のようで、門が閉まっている。


 しょうがない忍び込むか。


 人通りの少ない場所を選び、辺りに誰もいないこと確認してフェンスを乗り越える。管理棟にはまだいくつか明かりが見えるので、人が残っているようだが、敷地内は街灯は点いているものの人の姿は皆無だ。


 サッカー場と野球のグランドの間にそいつはいた。屋根の掛かった土俵の真ん中に厳かに鎮座している。


 お相撲さんか!?


 いや、象だな。二足歩行の象が土俵の上にいる。立派なあんこ型だな。まんま、力士やないかい!


 有象無象バスタードガネーシャ七等呪位。ヒンドゥー教の神の一柱ガネーシャの闇に落ちた子。闇に落ちたことで聖なる力を失ったが、父から盗んだ聖なるアンクーシャを持つ。


 神の子どもかよ!? それに聖なるアンクーシャって何よ!?


 強そうだ。いや、間違いなく強い。すでに二つの目は俺を捉えている。なのに微動だにしない。


 戦略的撤退か? それとも、死中に活を求めるか? ってほどでもないか? 恐怖という意味でなら闇騎士ダークナイトのほうが怖かった。見た瞬間に逃げようと思ったからな。


 こいつはどうだ? 確かにヒリヒリと肌に感じる強者の気配は本物だ。だが、恐怖はそれほど感じない。


 加速スキルが自分を信じろと訴えかけている。


 ならば、自分の力を信じるまで。


 ゆっくりと土俵の上にあがり、有象無象バスタードガネーシャに眼を飛ばす。対して有象無象バスタードガネーシャは、立ち上がり横綱の如く俺を見下す。倒せば金星もらえるか? 金一封も欲しいところだ。


 はっけよ~い のこった!


 両者、土俵上でがっぷり四つ! にならないから!


 並列思考、加速を使用しナイフを横一文字に一閃。先制攻撃で風切りを至近距離で発動。


 有象無象バスタードガネーシャ、避ける暇もなく腹を斬り裂かれ血飛沫が舞う。


「パオーン!」


 苦痛に歪めた顔でぱお~ん……パオーンかい!


 いつの間にか右手に持った杖を振り回し距離を取ったかと思うと、掲げた杖が光かり有象無象バスタードガネーシャ包む。有象無象バスタードガネーシャの傷が綺麗さっぱり無くなっている。


 癒しの杖か!? もしかして、これが聖なるアンクーシャってやつか! 


 ガネーシャ父ちゃん、そんな凄いもの盗まれんなよ!







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