そんなわけはない

「じゃあさ、おれがこの犯人だって言ったら、どう」

 いつもどおりのバカみたいな顔をした親友は、とある事件の記事を開いたスマホ画面を目の前につき出してきた。

「やりそうじゃない?」

 それは、ただの連続殺人事件ではない。今までの被害者三人とも、腹や腕、太もも、さらには首まで、身体のいろんな部分に奇妙な痕が残されていたらしい。

 ひとくち食べられたような、かじった痕が――。

「いやお前な、ただやりそうってだけだろ。お前にあんなこと、できるわけないって。あと不謹慎」

「えぇ? なんか、……とりあえず不名誉なんだけど」

「知るか」

 心臓が止まるかと思った。

 そんなこと、ありえるわけがない。こんなバカなヤツに勘づかれるなんて。


お題:まさか 299字

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