雪に溶ける

 私は、タバコをふかしながら窓の外を眺める彼をめつけた。視界いっぱいに広がる銀世界に、彼はどんな気持ちでそのにごった煙を吐き出しているのだろう。

「あなた本気でそんなこと――」

「だから、終わらせようって。何もなかった頃みたいにするんだよ。それで全部、白紙に戻せる」

 どうして、たった四文字のそれが言えなかった。本当はわかってるから。許されない関係だったのも、進むべきではない道だったことも。

 だから私の感情は、あなたへ向けるはずの「愛してた」は、言葉になり切れず降る雪に溶ける。


お題:白 235字

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