お先に失礼します

たもと

King Gnu常田大希『祖母宅から新年初パフォーマンス 』

真冬の冷えきった部屋で写真を探していた。

若い頃の写真はバカ兄貴に燃やされ捨てられていため小学生までのものしか残っていなかった。祖母に抱かれて撮った生後間もない白黒の一枚が唯一私のまともな写真だった。

いくらなんでもこれじゃ遺影にはならないだろう。それにしても正月早々やることじゃない気もするが、そもそも年中行事とは無縁な人生を歩んできた私にとって正月というものは勿論のこと例外ではなく、今まさに十分暇を弄んでいたので丁度いい。

還暦が近づきそろそろ終活の二文字が脳内にこびりついてきはじめたが、言っておくがその前に私の実母は健在である。特に根拠もなく長くは生きられないだろうと言い続けはや半世紀。4、5年ほど前から私はきっとこの実母よりも早く死ぬのだろうとぼんやりと思いはじめていた。でもそれは本望ではない。嫌いな実母に看取られて先に死んでいくのなら、いっそこれ見よがしにとびきり笑顔の遺影をデカでかと置いて毎日見張ってやろうじゃないの。そんな気持ちで今、アルバムにさえ貼られていない色褪せボロボロになった白黒混じりの写真の箱をひっくり返し品定めというわけ。なんて縁起のよい年明けではないか。

【エピソードタイトル解説】

暖かい家族というものは心を豊かにしてくれそこから才能を導きだしてゆく。

自分がもし常田家に生まれていたら…とタラレバ的なことを考えるのはよそう。





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