File5 嶋屋滉平と多喜組

 俺は九鬼泰照。暴露屋を代表する情報屋だ。

 さてと、今回もまたここに依頼者が来る。

 今回の依頼者は、60代の男で、名を池永英崇いけながひでたかと言った。

 池永は、大手ファミレスチェーン『いけなが』の社長なのだと言う。

 「まさか、有名人である貴方がここに来るとはねぇ…で、要件は?」

 「はい。最近、会社に、こんな物が……」

 池永から渡された紙には、『死んでしまえ』と書かれていた。

 「ほう…これは、れっきとした脅迫状だね」

 「はい。これだけに留まらないんです。元々あった店舗が、別の店に変わっていたり、会社の前に猫や犬の死体を置かれたりしていて……」

 「警察には?」

 「言いました。ですが、まだ実行犯が見つからなくて…」

 「でもここに来たという事は、貴方は犯人の目星はついたんだろうね」

 「はい。この男です」

 出された写真には、見たことがある男が写っていた。

 「コイツは…」

 「はい。嶋屋滉平しまやこうへいです。新しくできたファミレス、『しま屋』の社長で、しかも、指定暴力団、多喜たき組と関わりがあるのです。この事を知り合いの記者から聞きました」

 「……………わかりました。では、警察より早く暴露いたします」

 俺は池永を帰らせると、嶋屋を詳しく調べ上げた。

 嶋屋滉平。59歳。『株式会社しま屋』の社長。ライバル企業を落とす執着心を人一倍抱えていて、色んな中小企業を潰してきた。

 そして、今のターゲットが、『株式会社いけなが』なのである。

 指定暴力団、多喜組。組長は、多喜彰たきあきら。58歳。普段はアメリカの田舎町に住んでいて、日本にいる構成員に指示を飛ばしている。構成員は、全員外道で武闘派。もれなく多喜も外道である。嶋屋とは腐れ縁で、多くの出資をしている。嶋屋との関係は今のところ知れ渡っていない。さらに、あのチーム絵札とも関係があるという噂もある。

 俺はまず、嶋屋の会社が多喜組と関係があると、マスコミにリークし、取り敢えず嶋屋は堕とした。

 そして、俺は多喜組についてどう対処するか、組長の桂田さんと若頭の福地康史ふくちやすしさんに話した。

 「うむ……多喜組は、時折ウチのシマに来て荒らしに荒らすからな。分かった。比嘉と伊波であの組を潰そう。そして九鬼よ。お前も動向だ。」

 「えぇ。俺もあの組にはムシャクシャしてましたからね」

 「はい」

 俺は比嘉と伊波を連れて多喜組に行った。

 まず、比嘉がバットを持って多喜組のドアを蹴り破った。

 無論、組員は驚く。しかし、その驚いている間に殺戮は始まる。

 比嘉はバットで、伊波は2丁拳銃で組員を殺っていく。

 俺は二人に組員を任せ、奥に進む。そこには多喜組若頭、南條啓なんじょうけいと嶋屋がいた。

 「南條さん、多喜さんは!?」

 「だめだ、電話に出ない…親父のやつ、何してるんだが…」

 「見つけたぜ…どうやら、親父さんは不在のようだな」

 「きっ、貴様!情報屋の九鬼!」

 「何故だ!情報屋のくせにカチコミだとぉ!」

 「別にいいじゃねぇか。これでも、藤松会関係者だぜ」

 「ちっ……情報屋なんて関係ねぇ!ぶっ殺してやる!」

 すると、南條は懐からドスを出した。

 「ケッ、俺のドスが光るとき!お前は切られた死体だぁ!」

 そう。南條は裏社会で『ドス使いの南條』と呼ばれているのだ。

 「シャウラっ」

 南條はこちらに突進してくる。しかし、こういう危険を何度も通ってきた俺にとって、こんなもの、避けれる。俺はドスが服につつかれる前になんとか避けた。

 「何ッ!俺の攻撃を避けただと!?」

 「こんなもの、すぐに避けれるよ」

 「舐めやがってぇ……」

 南條は分かりやすい挑発に怒り、上からドスを振った。しかし、これも避けてやった。

 「キキキ……………じゃあこの手で絞め殺したらぁ」

 すると、ドスを捨て、首を掴もうと手を出す。そして、俺は南條の手を握ってやった。

 「なっ……」

 「二度と手を使えないようにするよ」

 俺は力強く手首を握った。そして、バキバキという音が、南條の手首から聞こえた。

 「ギャァァァ!」

 そのまま、南條は失神した。

 そして、俺は念の為喉に貫手をした。

 嶋屋に近づくと、奴は近くにあったピストルに手を出した。

 「ま、待て!俺は堅気だ!堅気を殺すのか!?」

 「俺を殺そうとした時点で、アンタは死ぬんだよ」

 俺はピストルを奪い、嶋屋を撃った。

 比嘉と伊波の所に戻ると、二人はすべてを終えていた。

 「多喜はいなかった」

 「そうですか」

 「では、舎弟に死体処理をさせますので、お先にお帰りください」

 俺は事務所を出ると、そのまま帰った。

 (組長さんがいれば、例の半グレと関係あったのか聞きたかったなぁ)




 一方その頃アメリカ。多喜は日本に帰ろうとして、空港にいた。

 「たくっ……アイツ等に電話を掛けてもなにもないな」

 すると、目の前から何かを持った男がやって来た。

 「貴方…多喜さんですよね」

 「あ?」

 その瞬間、熱い閃光が飛び出し、多喜を消し飛ばした。

 その頃、日本行の飛行機に乗った『チーム絵札』の親玉、桐田は時計を見ていた。

 「もうそろそろ、爆発する頃か?多喜組め…本当に役立たずだな。これからは、ウチのものを積極的に使うとするか。とはいえ、ジャックスの残党は使えるなぁ」

 そう語る、桐田の顔はまさに悪魔の顔だった。

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