第二話 ゲームスタート
【24:30 ? 西園寺小百合】
「まず、出口を探しましょう。鍵を見つけたとしても脱出口を見つけないと元も子もないからね。」
この異常な現状をさっさと脱するためにはまず脱出口を探すのが早いと思う。最悪これが建物なら窓を割ってだって脱出できるしドアでもよほど頑丈でないななら3人いればけ破れるだろう。
「分かれて鍵を探したりとかはしないですか?」
「この現状ならみんな一緒に動いた方がいいかも・・・、何があるかわからないし。」
確かに何もわからない現状で分かれて動くのは流石にまずいだろう。
「それは最終手段にしましょう。本当になにも手掛かりが見つからなかったときは手分けをすることにしましょう。」
「そうですね・・・。分かりました。」
「じゃあ行きましょうか、何があるかわからない以上急いだほうがいいわ。」
閉じ込められていた部屋から出るとそこは長い廊下になっていた。とても薄暗いが何か所か蛍光灯はついている。
(やっぱりここ学校みたい?でも電気は通ってるみたいだけど、やっぱり何かがおかしい。ここが何階なのかもわからないし階段探さなきゃ。)
ともかくここからすぐ逃げなくては。
不安を抱えながらゆっくりと歩き出した。
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【24:40 玄関口 九十九一】
「なんだコレ・・・。」
玄関口まで来てみた。階段を下まで降りて歩いてきてるのだからおそらくここは一階なのだろう。玄関口ははすぐ見つかった、古い木造学校のような構造らしい。
来てみた・・・のだが・・・。
玄関口には真っ赤なペンキのようなもので謎のマーク?のようなものが書かれていた。
「なにこれ、魔法陣みたいな・・・?」
「こんなん本でしか見たことないなあ・・・。」
前読んだオカルト雑誌で見た黒魔術系記事とかのところに載ってた魔法陣みたいな感じだ、ただこれが何なのかは全くわからない。
しかも何より、この赤いペンキのようなもので書かれてるおかげでより不気味に見える。
「これもしかして・・・。」
「え、小百合ちゃん触ったら危ないかしれないよ!?」
西園寺先輩が床に垂れている赤いペンキのようなものを指にとり何かを確認していた。
「これ・・・。血液だ・・・、なんのものかはわからないけど。」
「えぇ!?ほんと小百合ちゃん?」
「うん、多分・・・ね。」
西園寺先輩の家は医者だったはずだ。なんとなくそういう知識があるというのは沙紀先輩が話していたのを聞いたことがある。
「なんか、これ相当まずい状況になってませんか?」
「もうすでにかなりまずいと思ってたけど・・・、危ないカルトとかに拉致られたとかってことになるのかな・・・早く逃げないと危ないと思う。」
「西園寺先輩さっきから思ってましたけど、めっちゃ落ち着いてますよね。」
「こういう時にパニックになる方が危険よ。でも危機感は絶対に忘れたらだめ、何があるかわからないんだから。」
この先輩はただの脳筋ゴリラだと思っていたが、学校の評判通りの頭のいい先輩だったようだ。
「・・・すごい失礼なこと考えてなかった?」
「ナニモカンガエテナイデスヨ。」
「なんで片言なのかしら?」
とても白い眼を向けられた。この人はエスパーか何かだろうか?たまにすごい感がいい時がある。
それにしても・・・、
「なんかめちゃくちゃ頑丈ですねこの扉。」
「そうね、まったく開く気配がない。しかも窓も割れないし。」
一切扉が動かないのだ。窓も先輩が蹴っ飛ばしていたが割れる気配すらしなかった。とても頑丈、なんてレベルじゃない。
(なんだこれ強化ガラスみたいなのでも使ってんのか?)
「とりあえず開かないならさっきの放送で行ってた通り鍵を探さないといけないんだよね?」
沙紀先輩が不安そうにそうつぶやいた。
「そうですね、なんにせよ開かない壊れないんじゃお手上げです。鍵を探したほうがよさそうですね。」
そうして玄関を離れた時だった、
嫌だっっっっ!!!助けてくれ!
悲鳴が聞こえた。
「え!何!?なんなの!?」
「誰っ!?他に誰かいたの!?」
断続的に聞こえる悲鳴。何かに襲われているのは明白だ。逃げるにしても助けるにしても急がなくては。
(ていうかこれは逃げ一択だろう!俺ら学生だぞ。)
「助けに行くわよ!」
まじか、この先輩。頭の中がゴリラに浸食されたらしい。
「先輩!無理です!僕ら学生ですよ!?」
「ならこの近くで隠れてなさい!すぐ戻るから!」
西園寺先輩は僕らを置いてそのまま悲鳴が下方向に走って行ってしまった。
「小百合ちゃん!」
「ごめん沙紀!近くに隠れて待ってて危ないかもしれないから追ってこなくていいから!」
沙紀先輩が引き留めようとしたが、西園寺先輩は見えなくなってしまった。
「おいおい、マジかよ・・・。」
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【24:50 体育館 西園寺小百合】
私はすぐに走って駆け付けようとした。どうせ脱出を目指すなら人は多い方がいいに決まっている。それに・・・
だがその期待はすぐに裏切られることとなった。
バタン!と勢いよくドアを開けた体育館のようだ。ソレはそこにいた。
ボリッ!バキッ!
それは腕を食べていた。
「いやだ・・・たすけ・・・・。」
グシャッ!それは頭を一飲みにしそのままかみ砕いた。耳障りな音とともに血の匂いが広がる。
「なに・・・?こいつ・・・?」
それはかなり大きかった2m以上はあるだろう魚と人を合わせたような顔をしていた。体が大きいのもあるがかなり筋肉質だ。
化け物、この言葉がぴったり合う。
「グルルル・・・」
それと目が合った。
(逃げなきゃ・・・、逃げなきゃ!!)
そう考えた時には体は動いていた。すぐに振り返り逃げ出そうとしたその時だった、
「ガアッ!!!!!」
何かが飛んできた。飛んできたソレは私の背中をとらえた。
「いっっったっ!!!」
ドンッ!とすさまじい音がした。飛んできたソレは私とともに廊下に転がった。それが目に入る。
「ヒッ・・・!」
頭と右腕がない死体だった。左腕は逆方向に曲がり投げられた衝撃で足がもげかけていた。
吐きそうになる。体も痛い。それでも逃げなくては!
私はその場から逃げ出した。
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【同時刻 2階空き教室? 九十九一】
「沙紀先輩はここで隠れていてください。」
「今はぐれたらまずいよ!小百合ちゃんを待とうよ!」
西園寺先輩とはぐれた後、僕と沙紀先輩は2階に上がって空き教室に身を潜めていた。沙紀先輩に身を隠してもらい西園寺先輩の助けに行こうとした・・・のだが。
「でも、西園寺先輩がさすがに心配です。いくらあの人が喧嘩強くても刃物持ったやつとかだったら危なすぎます。人数がいた方がいい。」
「でも・・・」
あの時僕は西園寺先輩を止められなかった。だけどあの状況に一人で突っ込むのは危険だ、人数はいた方がいいだろう。
「沙紀先輩は僕たちが来るまでここで身を隠してください。必ず西園寺先輩連れてくるんで。」
「もー、分かったよ。お願いね。」
「了解です。」
僕は教室を出て階段まで走り1階まで降りた、その時大きな音がした。なにかがぶつかるような音だ。
(西園寺先輩大丈夫かよ!?)
あの人をゴリラとか言ってはいるがあの人も女子高生だ。心配の一つや二つくらいはする。
その時玄関口に誰かが走ってきた、西園寺先輩だ。
「その恰好どうしたんですか!?」
「うるさい!ともかくどこか隠れるわよ!急いで!」
西園寺先輩の服には大量の血のようなものが付いていた。それに西園寺先輩が少し足を引きずって見える。
これは本格的にやばい状況だ。まずこの場から離れなくては。
「沙紀先輩には2階に隠れていてもらってるんでそこ行きましょう!あそこは鍵と目張りもあるんで中も見えません!」
「分かったわ。」
西園寺先輩と合流した僕はとりあえず沙紀先輩のいる教室に向かった。
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【25:05 2階空き教室? 亜森 沙紀】
「小百合ちゃん!大丈夫なの?」
小百合ちゃんを一君が連れ戻してきてくれた。だけど小百合ちゃんは真っ赤になっているし、何かに怯えてるように見えた。
「こっちの部屋に入りましょう。」
「ええ、そうね・・・。」
「沙紀先輩も早く。」
「分かった。」
そう言って一君は準備室のような部屋の扉を開け入っていった。
「とりあえず先輩ケガしてるんじゃないですか?」
「ええ、まさか人間そのまま投げれらるとは思わなかったわ。」
「は?どういうことです?」
小百合ちゃんが自分でテーピングをしながら話し始めた。
「何言ってるかわからないと思うけど。ここには化け物がいるみたい。」
「え、どういうこと?」
小百合ちゃんは見たことと自分に起こったことをそのまま話してくれた。
「えーと、じゃあここにはお魚に似た人を食べる化け物がうろうろしているってこと?」
「そういうこと。今でも信じられないけど。ここまでケガさせられたらね・・・。」
「そうだよ!ケガ!大丈夫なの?血だって・・・。」
「これ私の血じゃないから大丈夫よ。って言っても・・・足はひねったみたい。腕もひびくらい入ってるかもね・・・。」
「ひびって・・・。」
小百合ちゃんの状態はあまりよくないようだ。逆に言えばこれだけで済んでるだけましなのだろう。
「それにしてもここで止まってるのも危ないわ。いつあいつが来るかわからないもの。」
「そうだね、でもこれからどうするの?その化け物から隠れながら鍵を探さないといけないんだよね?」
「それなんだけどね・・・」
小百合ちゃんは言いずらそうにしていた。
その時だった、
「静かに!」
一君が私たちに呼びかけた。
それと同時だった。
グルルル・・・・
まるで獣のような声がした。
「あいつだ・・・。」
小百合ちゃんがつぶやいた。
「西園寺先輩が言ってた化け物ってあいつですか?」
「あんまり見ない方がいいわよ。」
「なにあれ・・・。」
それは小百合ちゃんが言ってた通りの見た目だった魚の頭に人の体がくっついたような化け物だ。そいつがいま近くの廊下を歩いていた。
私は自分で口を塞いだ。一君はそっと扉を閉めた。小百合ちゃんはじっと声を殺している。あんな化け物が近くを歩いているのだ、やり過ごすしかない。
足音は遠ざかって行った。
「はあ・・・。」
一難去ったようだ。
ホントこれからどうしよう・・・?あの化け物から逃げながら鍵を探すなんて危なさすぎる。しかももう一人死人も出てる。学校は意外と狭いし逃げ続けるのは無理だ。
「ほんとにどうしよう・・・?もう嫌だよう・・・。」
「沙紀大丈夫だから。」
「でも、もう無理だよ・・・。みんな食べられちゃうんだ・・・。」
「沙紀落ち着いて。ね?」
私が弱音を吐いていると小百合ちゃんがとんでもないことを言いだした。
「鍵の場所、わかるかも。」
「え、マジすか!?」
「声大きい。でもそう、分かりやすい場所にはあったの。ただあの化け物を何とかしないといけない。」
「どこに鍵あったの?」
私は素朴な疑問を問いかけてみた。
「体育館にあったわ。ステージの上にご丁寧に見やすいように飾ってあった。ただあそこの出入りが一本道だから、そこに寄せないようにアイツを引き付けないと。」
「誰かが鬼ごっこしなきゃいけないんですね・・・」
「そんなの危なさすぎるよ!だってあいつ人食べちゃうんだよ!?捕まったら・・・。」
「そうならないために何か考えないといけないの!」
ここまで怒る小百合ちゃんもめずらしい。
その時一君がつぶやいた、
「少しの間なら何とかなるかもしれません。」
そうして一君は作戦を話し始めた。
あんまり怖くないように書きたいクトゥルフ神話(仮題) Ghost note @G_master37
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