繰り返される改変

平葉与雨

第1話 人類滅亡対策本部

 今あるこの世界が何度も改変されているとしたら、あなたはどうしますか?

 たとえそうだとしても、私たち人間には知る由もないのです。


 ***


 2020年、東京オリンピックの延期が決まった頃、人類滅亡対策本部が会議を始めた。


「皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございます。直前までデータ収集が完了せず、事前に共有が出来ませんでした。申し訳ございません」

「そんなことはいい。早く本題に入りたまえ」

「承知しました。ではこちらをご覧ください」


 収集されたデータが参加者の目の前に投影された。


「ご覧の通り、人類はあと10年で滅亡の危機となります」

「2030年か……」

「今回はどれくらいの期間があれば変われるのだ?」

「前回を考慮すると、少なくとも5年は必要かと」

「なるほど。なら人類に残された時間はあと5年だな」


 会議初参加の新人、オーロンが声を荒げた。


「どうしてそうなるんです? 5年で変わらなくてもまだ5年ありますよね?」

「5年で変わらない者たちにもう一度話して5年待てと? 冗談じゃない」

「でもそれじゃあんまりじゃないですか!」

「君は新人だったな。過去のデータは見たかね?」

「いえ、まだ見てませんが」

「そうか。この会議は今まで何度も開かれているのだが、徐々に頻度が増えていてな。前回は10年前にやったのだよ」

「10年前……つい最近のことじゃないですか!」

「そうだ。人類は何度もあやまちを繰り返しているのだ」

「そうなんですね……」

「まぁ過去の話だ。今回どうなるかは分からん」


 データ収集をした司会が自身の予想を口にした。


「今までと状況が似ているので、再びアレを使うことになると私は予想しています」

「同じく」

「そんな……」

「とりあえず明日あすにでも地球にエージェントを派遣しましょう」

「そこから5年で変化が見られなければアレを使うしかあるまい」

「どうしても使うんですか?」

「仕方ないさ。使わなければ人類は滅ぶ」

「そうですか……」

「では、誰を派遣しましょう?」

「人類に一番詳しいのはディヴォークだ。適任はアイツしかおらん」

「承知しました。後ほど彼に連絡します。何か質問等はありますか?」


 ・・・


「特に無いようですので、これにて会議は終了します。ありがとうございました」


 会議が終了し、参加者は一斉に通信を切断した。

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