死にたいと願ったのは

かわら なお

 

死にたくてたまらない

いっそ殺してくれなんて思ったんだ この監獄から


恵まれた家だった

何も望まなくても手に入るような

「幸せ」だったんだと思う


自分だけが異常だったこの家では 誰も理解などはしてくれなかったが それでも恵まれているのだからと思ってきた


どんなに泣き喚いて扉を叩いても近所の人は見て見ぬ振りをした 見せ物じゃないと泣き腫らした目で睨んでも 誰も何も言わなかった

自分が「悪い子」だからそうするのだと彼らは言った

それでも恵まれているのだから


快不快も全てが親の思うがままだった

それでも殺したいほど恨んだことはない

例え閉じ込められても 寒空の下放り出されても

全部自分が悪いから


こんな人格になったことも こんな感情が欠落したのも 親のせいじゃないと言えば嘘になるかもしれないが それでも愛していた



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死にたいと願ったのは かわら なお @21115

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