風のガーデン

新種の花を見つけたら

あなたはなんて名前を付けるのだろう



「都心にも こんな物件があるのね。ねぇ、ここに決めましょうよ」


「そんなこと言ったって、こんな小さな庭では無理だよ。まぁ、イングリッシュガーデン風には出来そうだが」


「えっ、なんのこと?」


「ナチュラリスティックガーデニングを一言で表現すると『自然を再現したような庭を造ること』だと、君は言っていたではないか」


「あぁそうか。そんな昔の話を、覚えていてくれたのね」


「もう少し足を伸ばして、郊外を探そうか? もっと広い土地が買える」


「でも、通勤に不便だわ」


「人生に一度っきりの買い物だ。通勤に苦労しても、君の願いを叶えたい」


「ありがとう。でもね、そうしたら……」


「えっ、なんだい?」


「あっそうだ、この塀を取り壊してしまえばいいのよ」


「塀をとる……」


「ほら、ここにベンチを置けば、川を眺められる」


「まぁ、そうだが」


「それに、風も入るから気持ち良さそう……あっ見て見てっ! こんなところに可愛らしい花が咲いてるわ。鮮やかな紫色」


「それは、弱草藤だよ」


「なよくさふじ……」


「野原や河原などに繁茂はんもする帰化植物さ。群生していることが多いんだが、風が運んだかな……」


「ここに決めたわ」


「えっ?」


「郊外だと、あなたと過ごす時間が減ってしまう」


「いや、でもさ」


「いいのぉ~」





だってあなたが


わたしの庭だから




・・・


参考音源

パッヘルベル

「CANON」

https://youtu.be/Ptk_1Dc2iPY



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