下弦の幻影

あきらめられずに手を伸ばして

すり抜けたものに想いを馳せる


元々無かったものなら気にならないのに、あったはずのものを忘れてしまうことは難しい。そして一度落としてしまうと、いくら捜しても見つからなかったりする。そのうち何を捜していたかも見失って、何かが足りないという想いだけが手の中に残る。そうなってしまうと曖昧な願いは曖昧なまま、叶うことなくそらに吸い込まれ消えていく。結果、ありもしない偶像に手を伸ばし、届かないことに安堵する。


欲しくても手を伸ばすのを諦めた苦しさと

一度手にしたものを諦めようとする苦しさ



ぼくを弱気にさせるのは

逢えない日々がながいからか


それとも


今夜の片割れ月がやけに

もの悲しくみえたからなのか



地球ほしが隠した断片を辿るかのように

指先できゅうを描く


求めていないフリをしながらぼくは

誰よりもそれを


欲していたのかもしれない




・・・


参考音源

ステファン・レンベル

「bistro fada」

https://youtu.be/KnC15sgNdNI






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